終わった話
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うのに本人は一人去ろうとする。
去ろうとする方角には当然、出入り口があるが……そこには武蔵総長兼生徒会長がいる。
未だにこちらに背中を向けたまま……しかしまるで友を待つかのようにそこに立っている。
そして剣神は迷いのない足取りでその背中に向かっていく。
まるでそこに行くのが当たり前のように。
まるでそこに行くこそが望みという風に。
とりあえず、この男は私の言葉なぞ聞く耳も持たないという事は分かった。
だからこそ、聞く気がなかった言葉を聞いてみた。
「貴様は今、幸いなのか?」
間があった。
だけどその間に音は無かったが、その背中から何故か確信に近い形で彼がどんな反応をとったのか二つに絞り込めた。
苦笑か───微笑だ。
どちらの反応か。
結局、答えを得る事が出来ないまま答えは返ってきた。
「Jud.当然だとも───何せ俺は自分の道を選べてる。俺が望んだ幸いの道を。それを疾走してるんだ……贅沢だろ?」
ミトツダイラは膝を着きそうになるくらいの敗北感を感じていた。
否、敗北とすら言えないかもしれない。
何故なら彼が語りかけていた相手は妖精女王であり、彼の強さは全て自身の内に向けられていたのだから。
ミトツダイラは見失いそうであった。
誰かをではない。
余りの虚脱感に視野挟角に近い症状は起きているが、視覚は生きている。
だから見失いそうになっているのは自分の内にあったものであり、その名は自信と呼ばれるものであった。
今までの人生が片っ端から否定されていくような錯覚を覚えてしまっている。
無論、そんな事はないとは頭では分かっている。
今の第五特務という立ち位置も我が王の第一の騎士であるというのも自身の今までの在り方から得たというのは理解している。
頭では分かっている。
でも心が今、並んで出て行こうとする二人を見ているとそう思えない───
余りにも自然で当たり前のように並ぶ二人。
堂々としているなんてレベルではない。まるでそれが世界のルールであるかのように、あの二人は歩いているように見える。
最早、嫉妬すら覚えないというのはこの事だ。
総長は今の会話に何の反応もしていない。反応する必要がないと理解しているのだ。
・○べ屋 :『とりあえず今までの映像全部取ったけどナイトいる?』
・金マル :『自前で撮ったからお金は払わないよん』
どちくしょーーーー!! とこちらのシリアスを壊すつもりのように見える商人の狂行はとりあえず無視するが。
ああ……、と本気で感嘆の吐息を吐く。
ミトツダイラは知っている。
彼がかなりの疲労を抱えている事を。
そのせいで間違いなく体の動きや反応が鈍くなっているの事を。
訓練を経て、ようやく気付いた事の一つだ。
た
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