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とある幻術使いの物語
一話:藤原柊也
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「笑った、お返しだ! 変な顔になってるぞー」
それならこうするにゃ(ほれふぁら、ほうふるにゃ)!」
(ふぁに)!?」

 可笑しな声で抗議する黒歌が面白いので笑いながらそのままいじくりまわしてやる。
 すると、黒歌の方も反撃とばかりに俺の頬を引っ張って来たのでお互いの頬を引っ張り合って喧嘩し合うというなんとも奇妙な光景が完成してしまった。
 だとしても、俺達は真剣に戦っているので一切手を緩めずに引っ張り続けて最後にはどちらが相手をより変顔に出来るのかという勝負に変わってしまった。
 俺達の顔を見て笑う白音と琴音さん。そのうち俺達も馬鹿らしくなってきて二人で顔を見合わせて笑い始める。
 
「二人は本当に仲がいいわね」
「私は別にこいつなんかと仲良くないにゃ」
「琴音さん、俺は黒歌とは友達ですけど仲が良いわけじゃありません」
「そういうところを仲が良いって言うのよ」

 同時に指を差し合う俺達を見て微笑みながら琴音さんが俺達の頭を撫でて来る。
 そうされると俺も黒歌も何も言い返せずに黙って撫でられるしかない。
 まあ、黒歌も俺に対してお子ちゃまだと言っていたけど実際に撫でられると気持ちよさそうに目を細めるんだから同じような物だ。
 
「母様、わたしもなでなでしてほしい」

 俺達が撫でられているのを見て羨ましくなったのか白音がトコトコと歩いて来て上目遣いで琴音さんにせがみ始めた。隣で黒歌が白音の余りの可愛さにクラクラとしているのはいつもの事なので気にしない。
 そういう俺も思わず抱きしめたい衝動に駆られているのだから似たようなものだけど。
 とにかく、白音は願いどおりに琴音さんになでなでして貰えてご満悦の様子だ。
 そして、白音の可愛い姿を見れた俺達もご満悦だ。
 今更だけど、二人と友達になれてよかった。
 いつまでもこんな生活が続くといいなぁ……。


 天にまします我らの父よ。願わくは彼女達に祝福を与え給え。アーメン。


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