一話:藤原柊也
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習ってたんだな。
俺の頭の中で白音と同じ白色の髪を長く伸ばした儚げな美人の姿が思い浮かぶ。
顔立ちはどちらかというと黒歌の方が似ている二人の自慢のお母さんだ。お父さんの方は俺の母さんみたいに白音に物心がつく前に天国に召されたらしい……。
「そうにゃ、マスターすればトーヤのちゃちな幻術なんて目じゃない凄いことが出来るのにゃ!」
そんな暗い過去も感じさせずに、得意げに笑いながらビシッと俺に指を差して来る黒歌。
それにしても仙術か……結局なんなんだろうな? 凄いって事しか伝わってこないけど何が出来るんだろうか。
ちょっと見てみたいなと、俺が何気なく呟くと黒歌はしまったとばかりに目を見開く。
「……母様が傍に居ないときはまだ使ったらダメって言われてるにゃ」
「危ないってことか?」
「そうみたいにゃ。でも、もう使えるんだから使わせて欲しいにゃ!」
少し、はぶてたのか頬をプクッと膨らませる黒歌。でも、その表情がフグみたいで面白かったのか白音が黒歌の頬をツンツンとつついて遊び始める。
それにしても、黒歌の方もたったそれだけで機嫌が直るのはどうなのだろうか?
まあ、白音が可愛いのは事実なんだけど。
それにしても、琴音さんか……今日も手伝いに行った方がいいか。
実は琴音さんは病気で体が弱っている。色々と試したらしいけど一向に治る兆しは見られない。だから家での家事なんかは黒歌や白音が手伝っている。
俺も困っている人が居たら力になりなさいと父さんに言われているからよく手伝いに行っている。
よし、そうと決まったら琴音さんがいる二人の家に行くか。
山奥に建てられた昔ながらの日本の家。そこが二人の住んでいる家だ。
前に町に出てくればいいのにと言った事もあるけど琴音さんが言うには猫又の成長にとってはこっちの方がいいらしい。
確か気が満たされている自然がいいとか、言っていたと思う。
何の事かは分からないけど黒歌が言っていた仙術に関係するのかもしれない。
そんなことを考えながら床を拭いていたらいつの間にか終わっていたので雑巾を絞って外に干す。
「トーヤ君、いつもごめんね」
「汝の隣人を愛せよ、です。気にしないで下さい、琴音さん」
「ケホ、ケホ……ありがとうね」
少し咳をしながらも雪のように白い手で頭を撫でてくれる琴音さん。
それが少し恥ずかしくて思わず頬が熱くなってしまう。でも俺の様子を見てお子ちゃまと黒歌が笑って来たのですぐに頬の熱は引いた。
俺は琴音さんの手の下から抜け出すと仕返しとばかりに黒歌のほっぺたを引っ張ってやる。もっとも、女の子には優しくしろと父さんに言われているから痛くはしないけど。
「な、なにするにゃ!」
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