暁 〜小説投稿サイト〜
とある幻術使いの物語
一話:藤原柊也
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子ってどうしてあんなに可愛いんだ? 黒歌が白音シスコンになる気持ちがよく分かった。
 とにかく、その時に二人が猫又だとも知ったので俺達はお互いの秘密を共有して友達になった。

 それからは一緒に遊んだり、一緒に俺が持ってきたお菓子を食べたり、こうして幻術の出来栄えを見て貰ったりしている。
 と、今は集中しないとな。俺は二匹の猫を動かす。黒歌に白音を抱きよせさせたり、お互いの尻尾を追わせたりする。
 動く速さを上げていくと幻覚がぼやけてくる。俺のイメージが追いついていかないせいだ。
 父さんが言うには幻術において最も重要なのは想像力とリアリティらしい。難しいけど、簡単に言うとどれだけ本物に近づけるかが大切ってことらしい。
 だから、俺はいつも一緒に居る二人をモデルにした。
 他の物をイメージするよりも簡単に出来るから早く動かしてもイメージがぶれにくいはずなんだが……やっぱり父さんみたいにはいかない。
 幻覚を維持するのにも疲れて来たので溜息を吐きながら幻覚を消す。

「まだまだ、難しいか……」
「まあ、前よりは上手くなってたんじゃない? 本物の白音の可愛さには足元にも及ばないけど」
「厳しいな……」

 黒歌のこれぞシスコンといったセリフに思わず苦笑してしまう。この姉は普段は軽い感じで物事に真剣に取り組まない性格だけど、妹の事になると別人かと思うぐらい真剣になる。
 以前に一度だけ誤って白音をこけさせて泣かせてしまったことがあるけど、その時は酷かった。
 弁解の暇もなく黒歌にボコボコにされてしまったのだ。猫又が本気を出すと恐ろしいというのが良く分かった。その時から俺は白音だけは絶対に泣かさないと決めた。
 まあ、元々泣かす気なんてなかったんだけどな。白音もそこら辺は分かってくれたみたいだからその時は俺よりもボコボコにした黒歌に対して怒っていたし。
 うん、やっぱり白音は可愛いな。俺も黒歌の事が言えないくらい白音を可愛がっている自覚はある。だって、ほら。

「トーヤさんはすごい。姉様そっくりにつくるから」

 ホワホワとした笑顔で俺を褒めてくれるんだから。
 思わず白音の頭を撫でてしてしまうのは仕方ないことだろう。因みに『トーヤ』というのは俺のあだ名だ。俺の名前は藤原柊也(とうや)なんだけど『とうや』と言うよりも『トーヤ』の方が発音しやすいらしい。
 なので、学校でも『トーヤ』と呼ばれている。
 まあ、今はそんなことはいいか。なんだか黒歌が恨みがましげに俺の方を睨んできているから名残惜しい気持ちを押えながら白音から手を離す。

「ふん。私だって母様から習っている仙術を使えばもっと凄いこと出来るんだから」
琴音(ことね)さんから?」

 黒歌の奴、最近偶にいなくなると思ったら琴音さんからそんなこと
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