一話:藤原柊也
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フリードは感心したような声を上げる。少年の方は心底どうでもいいといったような感じで気力の無い説明を続ける。
どうでもいいにも関わらずにしっかりと説明をする少年は、根は優しいのだろう。
もっとも、力を得る以外に興味がないといった行動をとるのには理由があるのだが、それは昔から少年を知る者にしか分からない。
残念ながらフリードは少年の過去を知らないので分からない。
「そういや、先輩ってどこで幻術なんてエクスタシーな物を覚えたんすか?」
「……答える意味がない」
「ありゃりゃ、フラれちった」
あからさまに肩を落としてみせるフリードを無視して少年は在りし日を思い出す。
数年しか経っていないが随分昔のように感じる光景に思いをはせながら少年、藤原柊也は目を閉じるのだった。
―――――――――――・・・
ぼさぼさの黒髪を叩くことでやる気を入れて強くイメージする。
思い描くのは二匹の猫がじゃれあっている姿。
しっかりとした幻影が浮かび上がり自分のイメージ通りの姿が現れる。一匹は黒色の子猫、もう一匹は白色の子猫。自分が一番イメージしやすい姿だ。でも、“本物”じゃない。
これは偽物、『幻術』により生み出した『幻覚』だ。
父さんに基本だけ教えて貰った俺の家に伝わる秘術みたいなものだ。
父さんはこれを使って悪魔祓いの仕事をしているらしい。
俺もいつかは父さんみたいになるんだと思う。
でも、今はそんなことよりも目の前の事に集中しないといけない。
なぜなら、俺の目の前にはモデルになってくれた猫又の姉妹が面白そうに幻覚を見ているから。
大好きな姉に抱きかかえられて上機嫌な様子で目を輝かせながら幻覚を見ている五歳の白音。
そして、そんな妹の白色の髪を可愛くて仕方がないといった感じで撫でている俺と同じ十歳の姉の黒歌。
二人と出会ったのは今日みたいに人目に付かないように山で幻術の練習をしている時だった。幻術の練習ですっかり夢中になって二人の接近に気づかずに見られた。
俺はバレたら父さんに怒られると思い、丁度おやつに持ってきておいた板チョコを差し出して他の人に教えないように頼んだ。父さんからは人に見せたらダメだって言われていたからな。
だから、二人にお願いしてその時は事無きを得たのだけど……しばらくして、またこの山に来たら二人、というか黒歌からお菓子を催促された。
泣く泣く、また持ってきておいた板チョコを差し出した。
黒歌は俺から奪った板チョコを今よりも小さかった白音に全部あげた。でも、白音が板チョコを三人分に割って笑顔で俺と黒歌にも分けてくれた。
その時の笑顔は俺が今まで見て来たどんな笑顔よりも可愛かった。赤ちゃんじゃないけど、小さい
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