一話:藤原柊也
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気づけなかった。
いくら、ワイヤーが細くてもこれだけ張り巡らされていれば気づけないのは不自然なのだ。
だが、見えなかったのは当然だろう。少年はワイヤーをはぐれ悪魔の目から見えなくしていたのだから。
「さあな。今度は俺の方からだが、遺言はないか?」
少年は何もない空間からライターを取り出して火をつけ、これ見よがしにはぐれ悪魔の前にかざす。それを見た瞬間、一気に顔から血の気が引いていく。
そして理解する。この少年は自分を生きたまま焼き殺そうとしているのだと。
ベタつくガソリンが一層恐怖を煽る。
「や…やめろ…!」
「それが遺言か、随分と短いな。しっかりと覚えておこう―――十秒程な」
少年はどこまでも平坦な声で告げ、ライターをはぐれ悪魔の上に放り投げる。
最後の瞬間がスローモーションで訪れるという事もなく、はぐれ悪魔の体の上にライターが落ちる。
瞬間、燃え上がる業火。はぐれ悪魔は手足を切り落とされてしまった為にのたうち回ることも出来ずに断末魔の悲鳴を上げる事しか出来ない。
少年はその悲鳴を聞いても眉ひとつ動かさずに傷つき片方しか見えない黒い瞳で黙ってはぐれ悪魔が燃えていくのを―――どういった死に方をしていくのかを見つめるだけだった。
そして、遂にその命が潰える。だが、不思議なことに炎が消えた後には悪魔の翼があるだけで焼け焦げ一つない。
それどころか、ガソリンも大量に残りまるで先ほどの光景は幻だったように感じられる。
「いんやー、毎度毎度えげつないっすねぇー、先輩は。殺しの実験をするためにわざわざ逃げるふりをするなんて」
「フリード……来てたのか」
「先輩にえげつない殺し方を御教授して貰おうと思ったけど、さっすが先輩ですわ! おれっち惚れちゃいそー! 手足を切り落として動けなくして最後に『幻術』で焼き殺されたと思わせるなんてシビレルゥゥゥッ!」
突如として現れた少年よりも幾分か幼い白髪の子供、フリードが手を叩きながら少年の『幻術』を賞賛していく。
フリードが語ったように少年は脳に働きかけ『幻覚』を見せる『幻術』ではぐれ悪魔に見せることで脳に自分は焼き殺されたと錯覚させて殺したのである。ワイヤーは幻覚で隠し、マッチと炎も彼の創りだした幻覚だったのだ。
ガソリンだけはリアリティを増すために本物を使用していたがその気になればガソリンも幻覚で補える。
「人は思い込みで殺すことが出来る。人体実験でもそれは確認されている。実際には血を流していないにも関わらず血を流していると錯覚すれば自分は出血多量で死ぬのだと脳が誤解しショック死を起こす。……今回はそれを利用しただけだ。さらにリアリティが高ければ実際に火傷を引き起こすことも可能だ」
少年の説明に
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