二匹目《犠牲と出会い》
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近づいても怖がる素振りも見せない。まさに黒服の男からしてみればとにかく君が悪いのだ。しかし黒服の男はもう一つ疑問があった。目の前には子供が1人、だが周りが騒がしい気がするのだ。しかし暗い廃墟の中は隆文しか認識することが出来ない。
「お前……1人で怖くない……のか? 」
「怖いよ? でも……1人じゃないから! 」
「何? っ!? ひっ!? な、なんだこいつら!? うわ!? 気持ち悪い!? やめろ!? 嫌だ!? あがっ!? ひ、ひっ!? うわぁぁぁぁあああああああぁぁぁ…………」
【たわいもない。俺達一匹では太刀打ちできなくても万なら何とかなる。隆文? これがお前の優しさが生んだ人徳ならぬG得だ! ここにはお前を慕わない同士は一匹もいない! 】
「助かるよ、行こう! 」
黒服は気絶してその場に倒れ込んだ。何故そうなるのか。それは身体中をGが這い回り、黒服の男を埋め尽くしたからだ。自分を這い回る物がゴキブリと分かった人間が普通正気でいられるわけがない。しかもそれが自分を包み込んだとなれば意識など簡単に消し飛ぶのだ。
そして隆文は見張りを片付けながら階段で上へと上がっていく。でもしばらく上がった所で隆文は足を止めた。話し声が聞こえて来たからだ。その声の中には月村すずかの声も聞こえる。隆文はここだと思い慎重にその階にある部屋を覗き込む。すると数人の黒服の男達と縛られて寝かされている月村すずかの姿を確認した。
「どうしよう…………」
【そうだな? 相手は1人じゃないから……ここが潮時じゃないか? 流石にこの人数は俺達でも辛いものがあるぞ? 俺はお前が死ぬ所なんて見たくない】
「で、でもそれだと月村さんが…………」
【それはそうだが……っ!? おい、隆文逃げろ!? 】
「何をしてるクソガキ! 」
「え!? あぐっ!? は、離して!? 」
【マズイぞ…………】
隆文はたまたま部屋の外で用を足していた黒服に捕まり部屋の中へと連れ込まれてしまった。G達も隆文の命がかかってるが故に中々手が出せない。そして隆文は月村すずかの横へと投げ落とされ、彼女も今初めて隆文の存在を認識した。しかし月村すずかは自分も隆文を君悪がり始めた手前、どう話していいか分からない。でも隆文を見た月村すずかは不思議な感覚に襲われた。どうして隆文は怖がっていないのかである。そう、隆文は今の状況を恐れていない。これは異常であり、他の同じ境遇にある月村すずかにとっては意味の分かたない心情だ。
【文ちゃん、文ちゃん? 大丈夫か? 】
「あ……」
【喋らなくていい。だからそのまま聞いて。あと少ししたら僕らが隙を作る。だから隆文はその子と逃げるんだ。いいね? チャンスは一回だ。僕らも不死身じゃない。何匹かは死んでしまう覚悟だ。
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