踏み外した歴史編
第2話 逃避
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「あたし、これからどうなるの?」
「ロシュオが言っただろう? 見届けるんだよ。世界の終わりと始まりを。新しい世界が始まるためには、古い世界は一度滅びなければならない」
「いやよ! あたし、世界の滅びなんて見たくない!」
舞は大きく頭を振り、両手で耳を塞いでしゃがみ込んだ。
「お、おい、舞っ。大丈夫かっ」
ペコが舞の肩を掴み――目を瞠って後ずさった。
「ペコ?」
「痛みが消えた……」
慌てたように包帯を解いた彼の皮膚には、傷らしい傷は全くと言っていいほどなかった。
「黄金の果実。其は万能の力。ロシュオが言っただろう?」
愉快げに言うサガラとは反対に、舞は恐ろしいもののように自身の両手を見下ろした。
「……選んだら、どうなるの? あたしが誰かにこの力をあげちゃったら、それで世界は滅びるの?」
「だから、そうだって言ってるだろう。古い世界を滅ぼす以外に、お前たちに生き延びる道はない」
「――だったらあたしは、選ばない」
舞は自身を蹲るほどきつく抱き込んだ。その舞の体から金色の微粒子が砂のように落ちていく。
「選ばない。世界を滅ぼすくらいなら、この力は誰にもあげない。あたしだけが抱えてく」
「高司く……っ」
金色の光が閃き、貴虎たちは腕で目元を覆った。
次に視界が晴れた時、そこに舞の姿はなかった。
「あーあー。まさか始まりの女のほうから役目放棄とは。なかなかお目にかかれない展開になったもんだ」
「なん、だ……? 舞はどこ行っちまったんだ? おい!」
「俺じゃない。彼女は彼女の意思で、自分をこの次元から弾き出したんだ。今の彼女はあらゆる時、あらゆる場所に“偏在”する存在になった。どこにでもいて、どこにもいない」
「訳分かんねえよ!」
「俺も説明しにくいんだよ。俺と同じように、いつでもどこでも何でも見てる、まあ、お前らの言葉で言うとこのカミサマみたいなもんになったってとこか」
「――あんたの言ってること、全然わかんない。でも正直どうでもいい!」
叫んだのはチャッキーだった。
「舞が帰ってくるために、あたしたちはどうすればいいの!? あたしが知りたいのは……知りたいのは、それだけなの!」
少女同士の友情は、無垢で純真ゆえに、強い。
妹と関口巴の行動記録を読むにつけ、貴虎はそれを思い知った。
「なら呼んでやればいい。高司舞が“こっち側”に戻って来ようと思えるくらい、お前が必要なんだと強く訴えてやればいい。そうすればあとは高司舞の心次第だ」
「呼ぶ……」
「今回のレースは大穴だらけだからな。後はどうするか。俺はいつだって見守ってるぜ」
サガラの姿がホログラム状になり、消えた。
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