踏み外した歴史編
第1話 だから共には歩めない
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)が救急箱を持って貴虎の傍らにしゃがんだ。
「血は……止まってるみたいね。一応縛っとくか」
チャッキーは救急箱から三角筋を出し、銃創より上の足の部位を縛った。それから消毒薬をガーゼにたっぷり染み込ませ、それを貴虎の足の銃創に当てた。染みたが、声には出さずにすんだ。
最後にガーゼを当てた上からきつく包帯を巻き、テープで留めた。
「すまない。手間を取らせた」
「いいんです。あたしんち町医者やってて、よく手伝わされてましたから。でもこれ、誰にやられたんですか? やっぱりオーバーロード?」
まさか実の弟に撃たれたとは、貴虎も口に出せなかった。
言いあぐねていると、突然、舞が胸を押さえて苦しみ始めた。
「うあ、ああ!!」
「舞!?」
舞が押さえた胸から、黄金の光が溢れた。
光はすぐに治まったが、それを目撃した貴虎、そしてペコとチャッキーの驚きはいつまで経っても冷めなかった。
「診せてみろ」
聞き覚えのある声にはっとしてふり返ると、凌馬がいつになく真剣な様子で、ガレージに下りてきて舞を触診し始めた。横にいる貴虎に一瞥もくれなかった。
「――貴虎。キミなら何が行われていたか知ってるんじゃないかい?」
あの日。凌馬たちが貴虎をヘルヘイムの森で奈落の底に突き落とした日。もう二度と凌馬と言葉を交わすことも、会うことさえもないだろうと、それほどに貴虎は思っていた。
だというのに、凌馬はそれら全てがなかったかのように、自然に尋ねてきた。
口を開くのは本意ではない。舞の仲間である少年少女も知りたいだろうから話すのだと、己に言い聞かせた。
「彼女はロシュオによって、体内に黄金の果実を埋め込まれた」
にやり、と凌馬が口の端を吊り上げた。
「だったら好都合だ。この場で摘出できる」
凌馬が、持っていた小さなアタッシュケースを開けた。中のクッション材に嵌っているのは、1本の注射器。
「何だよそれっ」
「対インベス化免疫血清。現時点で最強のヘルヘイム抗体保持者である呉島碧沙の血から造った、まあ、ワクチンだ。皮肉にも碧沙君自身が証明してくれたよ。心臓に寄生した黄金の果実でも、これを使えば体外に排出できるとね」
「碧沙――? まさか、王妃から解放されたのか?」
「ご明察。関口君と初瀬君の奮闘によってね」
貴虎は大きく安堵した。妹が消失の危険から救い出された、それだけでも、貴虎の中で張りつめていた糸が一つ緩んだ。
凌馬が注射器を持ち、舞のドレスを掴んだ。
貴虎は内心慌てて凌馬の手首を掴んで止めた。
「待て。免疫血清を入れることが必ずしも黄金の果実排出には繋がるとは限らない。実証でやったインベスには効かなかったのを忘れたか」
「なら
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