第十二話:隕鉄の鞴『原初の炎』
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れたのが浅黒い肌を持ったミノタウロスであった。
「悪いが、お前等が守護するその剣は、オレが貰い受けるぞ」
闘牛の雄叫びがコロッセオに響き渡る。だが臆することはない。これより恐ろしいものなど、幾度となく相手取ってきたのだ。
さて、どこから攻めていこうか。
「決めた」
両の手に、一振りの長太刀が現れる。刀身が二メートルにも達するその太刀の銘は『物干し竿』。彼の剣豪『佐々木小次郎』が愛用していたと言われている大得物だ。
「始めよう」
無造作に振るわれた斧を屈んで回避。頭上を薙ぐ鈍色の突風をやり過ごして、そのまま大太刀を振り抜く。
硬い手応え。どうも、HPが残り20パーセントを切ってからミノタウロスの体表が硬くなったように思う。
「ッ!」
カウンター。凄まじい勢いで突き出された黒色の拳を、大太刀の刀身を添えて右方向へと受け流す。泳いでいる胴へ再び斬りつける。
????だが、絶対的な斬れ味を誇る大太刀は浅黒い体表に弾かれた。
舌打ちを漏らす。
そういえば忘れていた。ネロと初めてここへ挑んだ時もこの硬質化には苦戦したのだ。
そう。ミノタウロスの体表がここまで硬くなった後は????
「ブモオオオオォォォ!!」
「チィッ!」
雄叫びに空気が震える。仮装の肌を突き刺す威圧感をなんとかして振り払う。
それは正に鈍色の嵐。
吹き荒れる嵐を前に、人の身では対することはできない。
技巧もなにもない単純な暴力だが、今のミノタウロスに技巧などそんなものは必要ない。
そもそも、技巧とは力の弱き者が自分よりも上位の者と渡り合う為に編み出した対処法だ。完全優位に立っている鈍色の闘牛に、そんなものは必要ない。
だからこそ、弱者たるこの身は技巧を必要とする。
全神経を目の前の敵に集中させる。筋肉の収縮、初動のスピードから斧の軌道を先読みし、大太刀で受け流す。
焦るな、ゆっくりでいい。一つ一つの剣戟をやり過ごして、最終的にそこへ辿り着けばいい。
「投影、開始????!」
起句を。
全神経は変わらず目の前の敵へ。それと並行して、両手に握る大太刀から、鍵となる記憶が流れ込む。
ただ愚直に。
ただ一途に。
その生涯の全てを剣に捧げた男の半生。
「???投影装填」
飛翔する燕を絶ち切ろうと刀を振り続けていたが為に身に付けた対人魔剣。
「全工程投影完了????」
その名は????
秘剣????『燕返し』
刀が振るわれる。
自分ですら、なにが起こったのか分からなかった。
ただ、気づいた
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