第十二話:隕鉄の鞴『原初の炎』
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自分のシングルベッドの上。
横向きに寝転がる自分の目の前には、妙に艶っぽい声を漏らす想い人が寝ていたのでした。
「……取り敢えず。起きよう」
普段ならば悶絶した後、彼の寝顔を記録用結晶に収めるところだが、どうやらまだこの頭は寝惚けているようで。自分でも驚く程冷静に次の行動を開始した。
向かい合うようになっている体の向きを変え、ゆっくりと体を起こす。彼が目覚めないように慎重に毛布をどかして??????
「ん…………ぁ、朝か…」
しかし奮闘虚しく、彼は細く目を開けてしまった。
「…………」
「…ん、ユメか、おはよう。よく眠れたか?」
軽く欠伸をしつつ、レンは起き上がった。いつもは強い意志を宿して紅く輝いている両眼も、今は半分程に閉じられている。
今更になって頭が活動を始めて、恥ずかしさが湧き上がってくる。
「う、うん……って、なんでレンが一緒のベッドに!?」
「なんでって、昨日お前が提案してきたんだろう? 夜遅いし、眠そうだからウチで寝ていけそして私と一緒に寝ろ〜って」
「な…ッ!?」
成る程。認めたくはないが、納得はした。多分、この状況は私が酔っ払ったその結果だろう。自分の酒癖については今後改めなければならないと反省しつつ、しかし今はよくやったと褒めてやろう。
そうだ。想い人と添い寝して嬉しくないはずがない。それが酔った勢いにしろ、これまで出会った何人かのライバル達には一歩先を行くことになったのだから。
「くぁ……ん、アルゴからメッセージ…?」
寝ぼけ眼を擦りながら情報屋アルゴから届いたというメッセージを見るレンを眺める。
なんか、まるで新婚みたいだなぁなんて感想を抱いた私に、しかし彼はそれどころではなかったようだ。
「…そうか。今日だったか」
薄く開かれていた目蓋が大きく持ち上がる。気怠げな雰囲気は影を潜め、瞳は紅く輝きだした。
「すまんな、ユメ。急用ができた。昨夜は楽しかったから、また今度飲もう」
そう言って、彼はすぐ様立ち上がってそのまま、家を出て行ってしまった。
去っていく白コートの背中に、湧き上がる不安を抑え込む。
「……行ってらっしゃい」
きっと彼は死なない。そう他でもない、彼自身が言ったのだ。死ぬ訳にはいかないと。
だから、私が不安を覚える必要はない。もう彼の背中は見えないけれど、私は行ってらっしゃいと、小さく呟いた。
† †
急ぐ。
武装の装備は歩きながら。しかし転移結晶を使うのは勿体無いため、主街区にある転移門へ急ぐ。
「転移。セルムブルク」
視界が光に包まれて、そしてオレは鋼鉄の街に戻ってきた。
「おっ、レンっち!待ってた
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