暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 少年と贖罪の剣
第十二話:隕鉄の鞴『原初の炎』
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 兄ちゃん、と呼ぶ声が聞こえた。
 酷く懐かしい響きだ。
 この世界に来る前では毎日聞いていたこの言葉は、今ではもう聞くことはない。
 既にこの名を呼ぶ声がどんなものかは忘れてしまったし、二年もすれば女の子といえど多少は声変わりしているだろう。

 何故、今になって思い出したのだろうか。分からない。分からないが、しかし本能が告げていた。

 もうすぐ、この世界は終わりを迎える。
 それがゲームクリアによるものか、オレが息絶えることによるものなのかは分からないが、確かにそんな予感がしていた。

 もう一度。無邪気にオレを兄と呼ぶ声が聞こえた。
 深い闇の中、差し伸べられた手に、必死に腕を伸ばす。

 ああ、もうすぐ会える。
 忘れてはならない人は、なにもこの世界だけにいる訳ではない。オレはあの世界の人も忘れてはならないんだ。死んでしまった二人の家族と、オレを拾ってくれた新しい家族達。兄と慕ってくれた二人の妹。
 そうだ。オレは救われた。だから、その恩に報いるまで、オレが救われた分他人を救い切るまで、オレは死ぬ訳にはいかないんだ。


 伸ばした左手が、柔らかく暖かいものに触れた。
 闇に沈んでいた意識が、ゆっくりと浮上する。



† †



 左手で柔らかいものに触れながら、ゆっくりと瞼を持ち上げた。

「………?」

 ああ、そうだ。
 オレは、今まで一度も成功したことのない『憑依投影』をしてグリームアイズを倒して、そして意識を失ったのだった。
 それにしても頭と左手に柔らかい感触がある。

 状況を確認するべく、潰れていた両目をきちんと開いて上を見ると、顔を真っ赤にしたユメと目が合った。

「????????」

 働いてなかった脳がフル回転を始め、そして悟ってしまった。やっちまった、と。

「……び、Bだな…」

「っ????こんの、変態がぁぁぁ!!」

 ゴヅン、と鈍い音を響かせてユメの拳がオレの額を殴打した。目覚ましにしては少々乱暴すぎるが、しかし罪は此方にあるので文句は言えない。

「…すまん、A寄りのBだったな」

 二度目の拳骨が降ってくるまで、そう間はなかった。




「女の子にそういうネタはダメです!分かった!?」

「…大変申し訳ないと思っている。深く反省もしている。だから立たせてくれ、色んなとこぶっ飛ばした後に延々正座はキツすぎる」

 結局、是、射殺す百頭(ナインライブス・ブレイドワークス)によってオレが受けた被害は両目と右腕の部位欠損のみだった。体もずっと怠いままだが、両目は治ったし右腕の完治も時間の問題だ。然程気にすることではない。

「反省したならもういいです。今後、ユメちゃんに胸の話はし
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ