第18話
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恐る恐る並び、列を作り始めた。
「この皿を持て、……ほら、こぼすなよ?」
「お、おぉ……あの、お役人様?」
「何だ? 列は長いのだ手早く済ませ」
「こ、これは何人で分け合えばいいので?」
「……何を言っている? それはお前の分だぞ、分ける必要など無い」
「……へ?」
素っ頓狂な声を上げながら手元に視線を移す。両手でないと持てないほど大きな器に、並々と具沢山の汁物が注がれている。これほどの食事はここ数年、いや、もしかしたら初めて目にしたかもしれない。
「……」
農民は放心したように列を離れ広場に座り込む、手に持った皿をまるで己の命のように大事に扱い。落とす事を危惧し地面に置く
「……ング」
料理からのぼる芳醇な匂いを嗅ぎ、乾いているはずの喉を飲み込む、おそるおそる再び皿を持ち上げ口元に近づけ――
「っ!?」
そこから先の事はほとんど覚えていない。ただ一心不乱に食事を頬張るだけに精一杯で、美味いはずである味もわからない。だが手や口が止まる事は無く、気が付けば完食していた。
「……」
食事が終わり、仰向けになりながら空を見上げる。息苦しさを感じるが不快感は無い。
むしろ満足と言うか、彼の人生では初の感覚であった。
「……うぅ」
安心したからなのか涙が流れ出す。家を失い、家族と離れ離れになり、泥酔をすするようにして黄巾に身を堕とした。
まさか今のように満たされる日が来るとは――
「注目!!」
食事の余韻に浸っていると、配膳を終えた兵が声を張り上げた。
恐らく自分達の今後の話だろう。農民達は少し億劫に思いながらも体を向けた。
「……これより袁家当主にして南皮太守である袁紹様からお言葉を頂く! 心して聞くように!!」
『っ!?』
それまでだらけていた農民達も、たちどころに姿勢を正す。袁紹が南皮の太守であるなら、彼が自分達に食事を用意してくれたようなものに他ならない。
窮地に陥った自分達の希望そのものだ。一体どんな人物であろうか―――
農民達が思い思いの視線を向けていると、高台の上に一人の美丈夫が姿を現した。
「我こそが袁家当主、袁本初である! 皆の者……良くこの南皮まで来てくれた」
一時は朝廷に反旗を翻した自分達に、向けられたのは暖かい言葉であった。
又、袁紹の眼差しは慈愛に溢れ、不思議と農民達の肩の力は緩んでいった。
――もったいねぇお言葉だぁ
――んだ、袁紹様のおかげでワシ等は生きてるだよ
――太陽みたいなお人だ……
彼等は皆、一様に頭を下げ肩を震わせている。今なら黄巾に変わる宗教の教祖になれるのではないか、と言うほどの勢いだった。
「……だが此処に居る皆は、過
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