一匹目《発現》
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あっても害虫ではない。よってゴキブリに対しての駆逐行為は隆文にとっては人間の殺害となんら変わりない。言うなれば価値観の違いだ。
「あんた……ちゃんと風呂入ってんの? 」
「…………」
「あのね? あんたがいるから教室にGが絶えないのよ? 何とかしてくれない? 」
「…………」
「あんたね、何か言いなさいよ!? 」
「ちょ、ちょっとアリサちゃん!? ダメだって!? 別に蟲黒君の所為じゃないんだから」
「何言ってるのよすずか! 知ってるんでしょう? あいつがこの学校で何て呼ばれてるか」
「そ、それは…………」
隆文の存在は学校では有名だ。ただそれはいい意味でじゃない。隆文のいる場所、例えば教室や廊下には良くゴキブリが出る。そして隆文がゴキブリと話をする事もあり、悪い噂は学校中に広まったのだ。だから今では学校で知らぬ者のいない嫌われ者。ゴキブリの長。ゴキブリの帝王。生徒は皮肉を込めてこう呼ぶのだ……Gの帝王と。
「へへ……僕が何をしたって言うんだ…………」
「はぁ!? 何をしたですって? 決まってるじゃない!? Gよ、G! あのおぞましいGを呼び込んでるのよ! 何? それを今更しらばっくれようとしてる訳? 知らないとは言わせないわよ」
「お、落ち着いてアリサちゃん!? だからそれは蟲黒君の所為じゃないって!? 人がGを呼んだり出来るわけないよ」
「出来るけど? 」
「「え? 」」
「みんな〜? ちょい集合! 」
「な、何言ってるの? あんた馬鹿なんじゃ……ひっ!? いやぁぁぁああああああああああああ!? 」
「ご、ごき、ごごごゴキキ…………」
隆文の言葉はすぐに本当の事だと今クラスに残っている全ての生徒が認識した。何故なら壁の隙間や掃除用具入れの中、教室のありとあらゆる所からGが集まってきたのである。その為、クラスでこれでもかと言うくらいの悲鳴が起こった。しかしそれも当然である。隆文が呼んで集まったGは数で数えられない。教室の景色が黒一色になる程ここにはGがいるのだ。勿論、人がいるところは綺麗に避けている為人に張り付いたりはしていない。だがもしそんなことにでもなれば気絶ものである。
「どう? 信じた? バニングスさん? 」
「信じる! 信じますから!? 早くなんとかしてよ!? 気持ち悪いぃぃ……うっ……ひぐっ……うわぁぁ…………」
「ごめんみんな? 解散……女の子泣かせちゃったよ」
隆文も悪気があったわけじゃない。ただ、知って貰いたかったのだ。別に言葉が通じるいい奴らなのだからそんなに嫌う必要はないと。しかしそれはGと会話の出来る隆文だからこそ分かること。よって他人には絶対に理解されない。
「あれ? 花ちゃんは帰らないの? 」
【うん
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