第4章
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い骨折完治痕が肋にあったんよ。ホント、ホント最近の、半年以内の。ほんで、眼窩に治り掛けの打撲痕があったんよ。其れ以外目立った痣とか無いし、事件と関係無いし、調べんかったのやけど、今聞いて、まさかなぁ、でも時期が重なるなぁて。」
暢気にゆったり話す宗一だが、段々と課長の顔面筋が固まっていくのがはっきり見て取れた。
「詰まり御前は、青山涼子が、誰からか暴力を受けていた可能性があったにも関わらず、其れを俺に報告しなかったんだな?」
「関係無いと思ったんでぇす。」
「詰まり菅原先生の見解は…」
「雪村凛太朗が無精子症やて、今年の二月に判ったんやろ?ほんで去年の十一月に流産してるんやろ?…殴っちゃうよねぇ。」
「いやいや!殴りませんよ!」
「嘘ぉ、え?ほんならさ、本郷さん、自分の嫁が違う男の子孕んで、貴方の子ですキャピ、とかうんこな事抜かす阿婆擦れ托卵女、許せんの?」
「離婚はするでしょうけど、殴りませんよ。」
「だってぇ、どうよ。」
新しくカップを出せば良いもの、二人で一つのカップを交代に傾ける課長は、平手打ち一発位ならするかな、と丁度空になったので注ぎ足した。
「すぅごい女だな、青山涼子って。」
龍太郎の報告を横で聞いていた木島は、家鴨口を一層尖らせ、咥え煙草の儘云った。
「木島だったら、殴るか?其れが発端でDVになるか?」
「俺?」
そうだなぁ、とつまらなさそうに椅子を鳴らし、そんな事する価値も無い女だと思う、と灰を落とした。
「ほう。」
「見たくもないっていうか、触りたくもないっていうか、同じ空気吸いたくないっていうか、存在が無くなるよね。だから、無関心…、嗚呼そう、無関心になる、かな…?」
龍太郎は目を瞑った。
木島の云った言葉こそが、雪村凛太朗の本心なのだろう。
出張も多くなる筈、だよな。
吐き出した煙は、妙に熱かった。
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