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猫の憂鬱
第4章
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此の非閉塞性無精子症は、精子其のものが生産されていないか、されても、量が極端に少ない為、自然に妊娠する事は確率としては低い。
そして、雪村自身が其れを、今年初めに起こした交通事故で知った。
雪村が妻、青山涼子に対し、異常な程淡白な理由が判った。龍太郎の読み通り、全く愛情が無かったのだ、いや、最初はあった、あったから結婚したのだろうが、今年初めに判った自分の生殖問題に、一気に愛情が失せた。
まあ、当然であろう。
流産したから良かったもの、雪村が事故起こし検査で無精子症と判明したから良かったもの、生まれていたら修羅場である。
青山涼子の妊娠は、高確率で違う男なのだ。いいや、百パーセント雪村で無いと断言して良い。
何故なら、雪村は非閉塞でも、完全なる非生産型なのだ。妊娠させられる其れ自体を持っていない体質だった。
どんなにショックだっただろうか、雪村は。
我が子と信じた子供が流れ、実際は違う男の子供で、なのに妻の青山涼子は何も云わなかった、雪村が事故に遭わなければ絶対に判らなかった事、問い詰められ白状した妻、其れに対する失望感、発覚したから良い、若し此れが判らず生まれて居たら…其の不快感、嫌悪感、恐怖感、何もかも、如何でも良くなってしまうだろう。
「俺と一緒だな。」
龍太郎は呟き、書類を夏樹に返した。
「御前等さ、性格も名前も似てたら、其処も似てんの?どんだけ奇跡起こしてんだよ。此の儘犯人見付けてよ。」
「努力する。」
「え…?」
「嗚呼、私、龍太郎と云うんです。」
「本郷さん、え…?」
「私も、非閉塞性無精子症なんです、同じく全く精子が生産されない。」
前世で一体俺は何をしたんだ、どんな業を背負えば、こんな殺生な人生になる。
龍太郎、本気で前世は連続強姦魔だと信じている。女に言い寄られないのも其の前世の雰囲気が残るからだろう、と。
どんな物好きが、連続強姦魔に言い寄る。

だから俺は、結婚に意味を見出せない。

龍太郎の場合、早い段階で判明していたので意識はして居ないが、本能では意識して居たのだろう、恋人を作らなかった。雪村も四十手前で初婚と聞く、本能が結婚させないように動いていた、其の代わり、妻にも子供にもなる猫を盲愛した。
「夏樹さん、なんて?」
小会議室から戻った龍太郎に課長は聞いた。報告受けた課長は、ほう其れは又見事な馬鹿女だな、と感心し、何故か、嗚呼何故か横に居る宗一が顰めっ面をした。夏樹が来た時には居なかった。優雅に課長のカップで珈琲を飲んでいる。
「あんさぁ、本郷さん。」
「はい。」
「雪村凛太朗、折檻癖、無い?」
「え?」
「いやな。」
ガリガリと後頭部を掻き、唯のプレイやと思ってた、と今更感満載で非常に大事な事を云った。
「あんな、事件に関係無いから言わんかったんやけど、比較的新し
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