R.O.M -数字喰い虫- 4/4
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「ふぁんほあふ(なんとなく)」
「出たっ!うわ出たっ!!メリー必殺『なんとなく』!!昔もあの得体の知れない赤クレヨン何の脈絡もなく食べたし!その時も同じこと言ってたし!!なんとなくで突発的行動するのマジで止めてもらえないかなッ!!?」
「むしゃむしゃ……ごっくん……けぷっ」
「ああ、あああああぁぁぁぁっ!!完全に呑み込まれた……!!」
メリーの可愛らしいげっぷと共に、ヨクジンの手がかりはこの世から消滅したのだった。
ちょっと殴りたいと思うのはおかしいことだろうか。しかし殴ったところで事実を覆すことは出来ない。絶望に包まれた俺に対し、メリーはこれと言って意味もなくフッとニヒルな笑みを浮かべた。
「細かい事は気にしない、それが若さ。そして振り返らずにクールに去るのがハードボイルド。林太もまだまだ修行が足りないわ」
「やかましいわっ!何をエラそうに……」
「ちなみにこれで図形を『メリーさん』に取り込むことに成功したわ。私の出したいときに出せるし、複製も出来る」
「どんなビックリドッキリ機能だよ!?」
おのれ、この世界のどこかにいるメリーの在り方を望む存在め、と逆恨み的な憤りを覚えずにはいられない林太であった。相も変わらず彼女は突拍子もない。
ふと彼女の髪に目をやると、極彩色の蝶の髪飾りがつけられていた。
見たこともない種類の華々しい蝶だ。虫のことをそれほど好いていない俺から見ても、その羽根は覗きこみたくなるほどに煌びやかだった。
そう、異様なまでに目を引き付けるほどの。
「なんだそれ?最初から持ってたものじゃないよな」
「象徴ね。『数字喰い虫』がもしも孵化したら、こんな風になるって事。原点を抑えたことで『数字喰い虫』に優位性を得た証よ」
言われてみれば、芋虫はいずれ羽虫になって空に飛び立つものだ。
春歌はそこまで考えていなかったろうが、都市伝説となった『数字喰い虫』が最終的に何になるのかを想像した結果なのかもしれない。数字を食い尽くして空を舞う悪蝶。それとも、煩わしい数字を食べきって運命から解放された姿なのか。
「ところで林太、なぜ『数字喰い虫』の体液が極彩色なのか知ってる?」
「………醜い芋虫ほど、蛹になって脱皮を終えれば美しい文様の蝶になる。都市伝説で伝わる芋虫の醜さが増せば増すほど、その中身は美しいものになっていく………なんてな。理由は何とでもつけられるけど、正直俺には分からないよ」
「そう、理由はなんとでもつけられる。都市伝説はそういうものよ。意味は後から附随してくる」
あなたと私が出会った理由も――と呟き、メリーは疲れたように鞄の中へ潜った。
その時の俺には理解できなかった。その言葉が、メリーなりに俺の身に起きている変化を暗喩するものだ
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