R.O.M -数字喰い虫- 4/4
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』と言い出して、そのイメージが都市伝説的な恐怖とスリルへと変貌していったら?彼女が本当に『美咲』なのか疑われたら?彼女は、どうなると思う?」
「――わからない。わからないからこそ恐ろしい、か……まるで怪異の本質そのものだ」
「そんな不確定的な存在は誰も望んでいないわ。少なくとも私なら、そんな存在は要らない。林太がそうなったなら、私はそれを林太であると望まない」
望む、望まない。考えてみれば彼女にとっては行動の根幹となる部分だ。
他人が望むものをメリーは現象とする。ならば逆に、望まれないものは否定するとも言える。
案外、彼女がヨクジンを追うのを手助けしてくれるのも、ヨクジンがその『望まれない存在』だからなのかもしれない。
だとすると、俺は望まれた存在なのだろうか。いったい誰に、どのように、何のために。
メリーの言う『人の無意識の中』に、唯の一個人でしかない俺を生かそうとする意志が存在するとしたら――?
「……考えてもしょうがないか。とにかく、鞄に詰めたこいつを持って行く」
今、林太の手元には『数字喰い虫』の原点となった『数学の繭』の元本――ある種「魔導書」と呼べる代物であるそれと、そのオリジナルになった図形の描かれた日記がある。
一応持ち去っていいかを春歌に確認したが、彼女はもう数字も俺達も見たくないようで、恨みを込めた目で「それを持って早く出て行って!!」と叫んだので、遠慮なく貰って行った。彼女自身も、この呪われた数式をこれ以上見ていたくなかったのかもしれない。
「日記の方は、図形だけ取り外して残りを『羅生門』に預けよう。追跡はともかく、この手の分析や謎解きはあの集団の専門分野だ。図形の方は俺達で管理する。うっかりあちらに見せて美咲ちゃんと同じ結末を迎えさせるわけにもいかない」
「ほう、ほれがいいふぁね(そう、それがいいわね)」
「……………んん?」
ふと鞄の方を見ると、メリーが何かを食べている。もしゃもしゃむしゃむしゃ音を立てて、何やら白いものを――白い物の隅っこに膨大なまでの数字が書き重ねられた図形が見える。
いや、いやいやいや。まさかそんな、気のせいだよな?
「メリー。きみ、なに食べてる」
「『数学の繭』とその原点。ものすごく興味をそそられないわ。クレープと比べるとその存在価値は使い古して変な臭いがする雑巾?人間だったら多分吐いてるくらい」
しばしの沈黙。
「……………おいぃぃぃぃぃぃッ!?何食べてんだ?なぁ何食べてんだよ!!ここ最近でやっと手に入れたヨクジンの馬鹿でかい手がかりをなにキャベツみたいにムシャムシャ食べちゃってんの!?というか不味いんなら食べるなよ!!何でそれを食べようという思考結論に思い至ったのかその筋道が欠片も理解できないんだがぁッ!?」
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