R.O.M -数字喰い虫- 4/4
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て『結果的に他人にはメリーだと悟られないようになっていた』けど、それ以外ならば記憶を消す都市伝説もあるわ。今回のは、そのほんの一部を切り取って私が使えるようにしただけ。都市伝説とは元来そのような性質を持っているものだから」
「情報の浸透性に反し、根幹的な社会システムに引っかかる問題としては浮上しない隠匿性か……ま、今はどうでもいいか。それより、ちょっと聞きたいんだが」
「なに?」
「――彼女、本当に記憶をすべて消去するしかなかったのか?或いは記憶の上書きとか、できなかったのか?」
「無理ね」
一言でばっさりとメリーは断言した。
「あれは言うならば完成した絵画にぶちまけられたインク。取り除くには絵が描かれていた紙ごと張り替えるしかない。時間が巻戻るなら話は別だけど、生憎とメリーさんという都市伝説にはそんな力はない」
「なら、コピーの絵画を画板に張付けることは無理だったのか?」
「――特定の人間の記憶や人格を、しかも復元する形でというのは不可能よ。もしもそれでも形だけ取り繕うとするならば、その時は周囲の人間から客観的な彼女のイメージを重ねて、重ねて、何重にも重ねあわせることでそれらしいものを作ることは出来る」
「それじゃ本当に模倣品だな。……多分、彼女はそれを自分の友達と同じ存在だとは思えないだろう」
「言っておくけど林太。私が伝えようとしたのはそこではない。問題はそこではないわ」
「え?」
呆気にとられる俺を見上げ、メリーは諭すような目を向けた。
「林太、個人から見た他人の印象なんて時間がかかれば如何様にも変化するわ。それに、経験している瞬間を見た所で、実際に彼女が何を思ったのかは彼女にしか解らない。後は他人の勝手なイメージで定義づけられる。そんなイメージをかき集めても、彼女は恒常的な存在としていられない」
他人から見たあの子。他人の勝手なイメージでしかないあの子。ひょっとしたらこうかもしれない、というあの子。思い思いに、本人の解釈の都合がいいように組み替えられ、本質的に空虚なイメージ。それを流し込まれても、出来上がる形は、恐らく本来のそれとは別物になるだろう。
それと同時に気付く。人々が無意識的に感じた彼女という漠然とした存在、いわばそれはイメージであり予想通りであってほしいという願いでもある。願いを集めて一つの点にまで集約し、周囲のイメージに存在を左右される。他人の思いによってしか行動することが出来ないそれはまるで――
「彼女の存在が都市伝説化する……?」
半信半疑の予測に、メリーはこくんと頷いた。
「最初はそれでもそれらしく見えるかもしれない。でも、果たしてそんな不安定で不確定的な存在が長く『美咲』として存在していられるのかしら?彼女たちの誰かが『得体が知れない、気味が悪い
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