暁 〜小説投稿サイト〜
101番目の舶ィ語
第三部。終わる日常
第一章。赤マントのロア
第一話。雷雨の中の襲撃者
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ちろん戦闘でしょう」

一之江がそう言ったその時だった。
気がついた時には。
学校の中で物音が一切感じられなくなっていた。
教室を覗いてみても、中にいるはずの生徒達の姿が一人もいない。
物音が無く、人もいない。この世界には覚えがあった。

「『ロアの世界』?」

隣にいるはずの一之江に声をかけてみるが……返事はない。
まさか、と思いながらも振り向くと。
そこに一之江の姿はなかった。

「一之江?」

一之江の名を言った瞬間、背筋に冷たいものが走った。
慌ててDフォンを取り出してその熱さを確認すると。

「熱くない……し、光ってもいない、か」

つまり俺には危険はない、という意味なのだろうか?
だとしたらこの『ロアの世界』を張った奴の狙いは。
……一之江を狙ったもの?

「っ、一之江!」

廊下を一気に俺は走り出した。
誰もいない廊下、誰もいない校舎、誰もいない世界。
廊下を走る俺の額や全身から大量の汗が出る。
暑いからとか、走っているから、ではない。
嫌な予感が背中越しに感じる為に変な汗が出てしまうのだ。
つまり俺は焦っているのだ。
一之江に危険が迫っていることに対する焦りが。
この焦りには覚えがある。

「メリーさんの人形に追いかけられた時みたいだな」

この『ロアの世界』を展開している奴もそういうホラーっぽい何かなのだろう。
しかも対象は俺ではなく一之江のようだ。心のどこかで、一之江なら放置していても平気だろうと思う気持ちもある。なんせ、一之江は自他共に認めるくらい強い奴だからな。その圧倒的強さに俺は何度も助けられている。
だが、もう一つの心がそう思って安心するのを許さなかった。
一之江だって、ごく普通の少女なんだ。
キリカに言われてわざわざ毎朝俺とトークしてくれたり、宿題をサボったり、授業中に先生に見つからないように寝ていたり。
殺伐とした世界に踏み込んでいるからこそ、俺はアイツのそういう普通の。
ごくごく平和な日常の姿というのを大切にしてやりたい。
アイツの、ただの女の子である部分をもっともっと大事にしてやりたい。
そう思う。
だから。

「『ロア』! 俺の前に出てきやがれ!」

廊下を走りながら俺は叫ぶ。
怖がったり、逃げたり、悩んだりするのは『主人公』の特権で、一之江みたいなオバケサイドじゃないからな。だったら俺がこの『ロア』の相手をしてやるよ!

そう叫んで、数秒が経ったその時。

Dフォンが一気に発熱し、赤い光を放ち始めた。

「っ??」

手の中の熱さに驚きながら、周囲を見回す。
辺りは相変わらず物音はしなく静かだ。
だが……何かの気配を感じる。
それは、じっとりとした気配だ。
だが、外で雨が降っているから……
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