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戦国異伝
第二百十二話 死装束その十五
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気じゃった」
「おお、それは何より」
「お元気ですか」
「仏門に戻られ学問に励んでおられるとのことですが」
「お元気ですか」
「そうなのですか」
 徳川の旗本達もその話を聞いて喜んだ。
「ではあの方もですな」
「ご心配は無用ですな」
「そうであった、麿もほっとした」
 父の元気を確認してだ。
「これで都に上がったかいがあった」
「ですか、よく都に来られてますが」
「お父上とも会われていますか」
「そして公卿の方々とも会われ」
「蹴鞠と和歌も楽しまれていますか」
「茶道も好きでおじゃる」
 こちらもなのだ、とかく氏真はそうしたことに造詣が深いのだ。
「もっとももうでおじゃる」
「石高等はですか」
「これ以上は」
「竹千代殿から五千石頂いているでおじゃる」
 それで家を保たせられているのだ、今の氏真は言うならば徳川家の客分もっと言えば居候である。それで気楽なところもあるのだ。
「これで充分でおじゃるよ」
「ですか、では」
「このまま」
「天下の泰平を願っているでおじゃる」
 こう言って笑うだけであった、氏真は何の野心もなく悠々自適なものだった。


第二百十二話   完


                       2015・1・4
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