第二百十二話 死装束その十四
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「数えきれぬだけいました」
「しかし戦の後で民を調べますと」
「数は減っていません」
「織田殿のところもそうだったとか」
「織田殿はそれこそ何十万と倒したというのに」
「それでもです」
「戦をして減らぬとは」
氏真もそのことについてこう言った。
「それ程面妖なことはないでおじゃるな」
「全く以て」
「殿も訳がわからぬと仰っています」
「あれだけ倒したのに民が減っておらぬとはとです」
「あの門徒達は果たして何処の者達だったのか」
「顕如殿もご存知ないとのこと」
本願寺の法主である彼もというのだ。
「これもまたです」
「おかしなことですな」
「それも非常に」
「有り得ぬまでに」
「一向宗も闇、高田殿も闇」
氏真はここまで聞いてこう言った。
「しかもでおじゃる」
「はい、この都でもですな」
「崇伝殿と空海殿は闇の衣でした」
「そして浅井久政殿のところにいた者達も」
「全てです」
「闇の衣を着ておりました」
「何かあるでおじゃるか」
氏真は首を傾げさせてこうも言った。
「これは」
「どうでしょうか」
「おかしいと言えばあまりにもおかしい」
「面妖に過ぎますな」
「あまりにも」
「とにかく高田殿はその様でおじゃる」
安土には来ないというのだ。
「そうなったでおじゃる」
「ですか、それでは」
「氏真殿はですな」
「安土にですな」
「行かれますな」
「そうさせてもらうでおじゃる」
こう答えたのだった。
「ここは」
「では」
「その様に」
旗本達も応えてだ、そして。
彼等もだ、こう答えた。
「我等もです」
「安土に向かいます」
「そしてです」
「殿のお傍にいます」
「では共にでおじゃるな」
氏真は自分から言った。
「安土に参るでおじゃる」
「そうですな、では」
「共に安土に参りましょう」
「そのうえで」
「殿のお傍に」
「竹千代殿も宴を開くという」
氏真もまたこのことについて言った。
「その宴がでおじゃる」
「楽しみだと」
「そう仰るのですな」
「竹千代殿は確かに質素でおじゃる」
このことは氏真も知っている、幼い頃より彼のことを知っているからこそそのこともよくわかっているのだ。
「しかしでおじゃる」
「はい、殿の宴にはです」
「お心があります」
旗本達も言うのだった。
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