第二百十二話 死装束その十一
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「この安土に大名屋敷を集め」
「そこに、ですか」
「大名の妻子を住まわせ大名達は一年ごとに領国と安土を往復させていこうと考えておる」
「そうしたこともですか」
「お考えなのですか」
「そうしようかと思っておる」
こう言うのだった。
「とにかくな」
「これからはですか」
「そうした仕組みを整えていってですか」
「天下を治める」
「そうされるのですな」
「その通りじゃ、天下はこれからじゃ」
治まるというのだ。
「まだ奥羽のかなりの部分と九州があるがな」
「天下を治めていく」
「その仕組みを進めていかれますか」
家臣達も頷くのだった、そして。
その中でだ、信長はさらに言った。
「南蛮、明との貿易は堺と神戸、横浜等に限る」
「何と、貿易もですか」
「そうした町の港だけですか」
「そこに限り、ですか」
「商いをされますか」
「うむ、そうしてそれぞれの港に奉行を置く」
そうした町にもというのだ。
「そうしていくぞ」
「ですか、では」
「その様に」
「あと数年は戦をせぬ」
伊達家まで降したがここから暫くは、というのだ。
「その間に色々整えていく」
「戦をしない間に」
「そうしてですか」
「天下を整え」
「一統に向かいますか」
「そうじゃ、そして一統してからにも進める」
そこも見ての言葉だった。
「では御主達にも働いてもらう」
「政に」
「それに」
「そうしてもらう、して面白いこともする」
ここでだ、信長は笑って言った。
「宴をするぞ、まずは我等が宴を開く」
「織田家がですか」
「そうされますか」
「そしてじゃ」
その宴の次にというのだ。
「そのうえでな」
「織田家の宴の次は」
「その次は」
「どなたが」
「どなたが宴を開かれるのですか」
「わしから頼んだのじゃ」
信長が、というのだ。
「馳走を頼むとな」
「徳川殿の馳走といいますと」
「それは」
「うむ、わしは山海の珍味を集める」
これは安土城が落成した時に既に行った、そしてまたそれをしかも前のそれ以上に大掛かりにやるのだ。
だが徳川の馳走、それはというと。
「しかし竹千代、徳川家はじゃ」
「徳川殿といいますと」
「贅沢がお嫌いです」
「そうしたこととは全く無縁です」
「馳走とも」
まさにだ、家康はなのだ。
「揚げたものはお好きですが」
「それ以外は極めて質素です」
「その徳川殿の馳走となると」
「果たして」
「ははは、何も珍味だけが馳走ではない」
信長はいぶかしむ家臣達に言うのだった。
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