第五十三話 山師その七
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「あそこだよ」
「そうか、じゃあすぐにな」
「その屋敷に行くのかな」
「ああ、そうするぜ」
薊は智和に強い声で答えた。
「今すぐにな」
「いや、少し待ってくれるかな」
「少し?」
「君達だけで行くよりも」
それよりもとだ、智和は薊に告げた。
「サン=ジェルマン伯爵にも一緒に行ってもらった方がいいね」
「幻術のことを考えてか」
「そうだよ」
智和は薊にその通りだと答えた。
「幻術のことを考えるとね」
「あたし達だけで行ってもか」
「その幻術に惑わされてね」
「あの伯爵に会うことすら出来ない」
「だからね」
それ故にというのだ。
「ここはね」
「まずはサン=ジェルマン伯爵のところに行って」
「あの人と合流してね」
そのうえで、というのだ。
「行くべきだよ」
「すぐに行っても仕方ない」
「そうだよ、それにね」
「それに?」
「あの伯爵は犯罪慣れしているよ」
彼が詐欺師であることからの指摘だった。
「だからね」
「あたし達が近寄るとか」
「幻術を見せている間に」
「逃げるか」
「そうしてくるからね」
「ここで話を終わらせられないか」
「君達の戦いをね」
それでというのだ。
「ここはね」
「サン=ジェルマン伯爵にもか」
「一緒に行ってもらうべきか」
「是非ね」
「そうか、じゃあな」
「うん、まずはね」
何につけてもというのだ。
「あの人に連絡しよう」
「わかったぜ、じゃあそのことはな」
「伯爵への連絡先は」
「携帯の番号を聞いています」
裕香がここで智和に言った。
「スマートフォンの方も」
「それは何よりだね」
「じゃあ今から」
「はい、連絡させて頂きます」
裕香は早速自分の携帯を取り出してメールを送った、すると程なくして返事が返って来た。裕香はそのメールも確認してから智和に言った。
「わかったとです」
「そう、じゃあね」
「はい、後は」
「うん、薊さん達はね」
「私は」
「先輩と裕香ちゃんは来ないでくれるか?」
薊はすぐにだ、その裕香に言った。
「今回は」
「危ないから?」
「だからかな」
「そうだよ」
まさにその通りだとだ、薊は二人に答えた。
「だから待っていてくれよ」
「それで帰って来た時は」
「パーティーしようぜ」
「パーティー?」
「何処か楽しい場所でな」
薊は微笑んで裕香にこうも言った。
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