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第一章
離れ小島
第二次世界大戦は終わった。それでだ。
敗れた日本の将兵達は降伏しそれぞれ戦っている相手の前に膝を屈した。彼等はそこから捕虜になった。
それはビルマの戦線でも同じだった。彼等はこれまで戦っていたイギリス軍に対して投降しそのうえで捕虜になった。そうしてであった。
彼等は程なくして捕虜収容所に入れられた。その場所は。
「覚悟はしていたがな」
「ああ、そうだな」
「こんな場所か」
「ここで生きることになるんだな」
日本軍の兵士達はうんざりとした顔で話していく。そしてだ。
将校の一人が兵士達にこう話した。
「覚悟するのはこれだけじゃないぞ」
「といいますと」
「まだ何かありますか」
「俺達は負けたんだ」
将校が話すのはここからだった。
「その負けた相手にイギリスが何をするかだ」
「それですか」
「話に聞いたところ」
「酷いらしいですね」
兵士達は将校の言葉を聞いてそれぞれ言うのだった。
「何か人間と思わないとな」
「そうらしいですね」
「徹底的にやってくるとか」
「そうなんですね」
「そうだ。覚悟しておくことだ」
将校は兵士達に強い顔で話す。
「いいな、それは」
「何があってもですね」
「今は耐えるしかありませんか」
「少しでも反抗したら洒落にならないことになるからな」
だからだというのだった。兵士達に強い言葉で忠告するのだった。
そしてだった。将校の忠告は杞憂ではなかった。
イギリス軍の捕虜への扱いは酷いものだった。まさに将校が言った通りだ。
少しでも反抗的とみなされればだ。いきなりだった。
殴り蹴るだけではない。それだけではなかったのだ。
捕虜を押さえ口を無理矢理に開かせてだった。その口に小便を飲ませるようなことをしたのだ。そうしてそのうえでだった。
「御前等は人間じゃないんだよ」
「そうだ、猿だ」
「猿なんだよ」
小便を飲ませさらに虐待を浴びせ倒れた捕虜に言うのだった。
「猿に何をしてもいいんだよ」
「それを忘れるな」
「黄色い猿が」
こうしたことが普通に行われる状況だったのだ。
そしてだ。軍人の家族の世話をしている時もだ。女は裸で彼等の前に出ても意に介さない。捕虜達はこのことからも察したのだった。
「人間じゃないんだな」
「そう思ってるんだな」
「完全に」
このことがだ。嫌になるまでわかったのだ。
「だから裸を見られても平気なんだな」
「動物に見られるのと同じ感覚なんだな」
「そうなんだな」
「結局のところはな」
自分達がそう見られていることをだ。察したのである。
それを認識してだ。苦い顔で言うのだった。
「こういうことなんだな」
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