テュール・ファミリア
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慮ってか、ミネロヴァは言った。
「そうか、世話をかけたのう。さっきは怒鳴ってすまぬ」
テュールは素直に謝った。
確かにテュールはミネロヴァとはデイドラを賭けて戦う敵同士ではあるが、それだからといって礼を失するようなことをする神として落ちぶれているわけではなかった。
「別にいいのよ。私があなただったら、きっともっとひどいことをしていたと思うもの」
そして、それを許さないほど、ミネロヴァも性格が悪いわけではなかった。
「それで、何があったか聞かせていただいてもよろしいですか?」
「いいわよ。といっても、私から話せることは少ししかないけれど」
と、前置きして、ミネロヴァはノエルの申し出に答えて、受付であったことを話しはじめた。
――デイドラがリズという少女を連れていたことも含めて。
◆
「きっとそのリズという小娘の所為でデイドラが深手を負ったのじゃろうな」
「そうでしょうね。彼は自分の限界を知っていますから、無茶はしないはずです」
終始静かにミネロヴァの話しに瞑目して耳を傾けていたテュールとノエルだったが、開眼すると剣呑な気配を漂わせて言った。
「ちょっとあなたたち、リズという子を助けたのはデイドラの意志よ」
その二人に少し気圧されながらミネロヴァは言う。
「そうと決まったわけではなかろう。もしかすれば、デイドラをたぶらかしたやもしれぬだろう。ふんっ、軽い気持ちで妾の眷族に手を出したことを後悔させてやるわ」
と、目に危なげな光を燈し、背後から後光とは異なるまがまがしい神威を立ち上らせるテュールに、
「言っておくけれど、デイドラは誰のものでもないのよ。それと、あの子は半端な気持ちなんかではないと思うわよ。私の本気の助言に屈しなかったもの」
と、ミネロヴァは忠告した。
「………………そうじゃな。少し熱くなりすぎたようじゃ。しかし、汝の脅しに屈しなかったのか」
テュールはミネロヴァが最後に口にしたことに怒りより驚きが上回って、少し目を見張って言った。
テュールはミネロヴァの本気の脅しを知っているだけに、彼女の言葉に驚きを禁じ得なかった。
「そうね。だけど、そんなことより、今はデイドラのことよ。このままだといつか、いやすぐにでも取り替えしのつかないことになるように思えてならないわ」
「わかっておるが、妾等にできることはない。デイドラから助けを求められない限りは」
と、言ってテュールは安らかに眠るデイドラに目を落とした。
「助けを請わない者は助けない、ね。あなたも大概頑固ね」
「それが、妾じゃ」
「そうね、じゃあ後は任せたわよ、テュール様とノエルさ
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