第十一幕その五
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「その度に楽しめるね」
「そんなにいいことなのね」
「貴女は何も食べる必要がないから」
「味とか満腹とかわからないわ」
食べることの楽しみ、それはというのです。
「そんなにいいものかしら」
「最高の気分になれるわよ」
「そうなのね」
猫はアンの言葉に少し考える顔になりました、そしてそのお顔でこう言いました。
「皆がそう言うのならそうなのでしょうね」
「羨ましいと思うことは」
「ないわ」
全く、という口調での返事でした。
「そんなこともね」
「ないのね」
「だって食べる必要がないし食べることも出来なくて」
「そう思うことも」
「ないから」
だからだというのです。
「それでなのよ」
「そうなのね」
「そう、あたしには全く縁のないことだから」
その食べることがというのです。
「興味も湧かないわ」
「そうなのね」
「だからウーガブーの国に着いた時も」
アンが皆に楽しみにする様に言っているこのこともだというのです。
「あたしは散歩を楽しむわ」
「そちらをなのね」
「そう、食べることも寝ることもしないけれど」
それでもというのです。
「お散歩は楽しめるからね」
「だからなのね」
「そちらを楽しむわ」
こうアンに言うのでした。
「そういうことでね」
「それじゃあウーガブーの景色を楽しんでね」
「そうさせてもらうわね」
こうしたこともお話したのでした、一行はそのまま歩いてです、煉瓦の道をどんどん進んでいって遂になのでした。
山と山、その間にある谷が見えてきました。アンはその谷を見て皆に笑顔で言いました。
「遂にね」
「ええ、来たわね」
「戻って来たわ」
こうベッツイに答えたのでした。
「ウーガブーの国にね」
「そうね」
「ただ、本当に早かったわね」
ウーガブーの国に戻った時がというのです。
「考えていた時よりずっと」
「そうね、歩く速さがね」
「予想以上だったから」
「皆と一緒だと」
「一人旅の時よりもね」
「足が進んで」
そしてだったのです。
「すぐに戻れたわ」
「やっぱり旅は一人で行くよりもね」
「誰かと行った方がいいわね」
ここでもこのお話になるのでした。
「やっぱり」
「そうでしょ、私が言った通りでしょ」
「本当にね。これでね」
「そう、後はね」
「すぐにこのお花をあの人にあげて」
ハンクの背中にあるコップの中の銀の菖蒲も見てです、アンは意気込む顔で言いました。
「そしてね」
「治してあげるのね」
「その為に旅をしたから」
それならばとです、アンはベッツイに答えました。
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