ターン27 鉄砲水ともう1つの『真紅』(前)
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僕もそろそろ部屋に戻ろうとしてチラシを机の上に置いたところで、ちょっと引っかかるものを感じた。
「……いや、なんでも。また明日ー」
「おう」
「あ、おやすみッス」
そのまま違和感を無視して部屋に戻ろうとした途中、やっぱり無性に気になったので一度引き返してチラシを回収してから改めて2階の僕の部屋に戻る。
部屋に入ってから僕の机の上にもう一度チラシを広げ、改めて上から下までしげしげと見てみる。どうも気になってしょうがないのに、何がそんなに気になるのか自分でもわからない。多分この問題が解決しないうちは眠れないだろうな、とぼんやり思った。明日は朝からチラシに書いてある場所、ここからだとちょうど校舎を挟んで島の反対側まで行かなくちゃいけないってのに。
「なんなんだろ、日付も明日って言ってたから別におかしくないし、アオリも吹雪さんにしちゃ大人しいけど別におかしくないし、地図も間違ってないし………」
一つ一つ声に出して指さし確認。小学生みたいだけど、これくらいしないとこの違和感はぬぐえそうにない。日付、アオリ、地図………。
『どれマスター、少し見せてくれ』
「チャクチャルさん!」
するりと後ろからチャクチャルさんの気配が近づき、じっとのぞきこまれる感覚。数秒後、ぽつりと一言。
『妙だな』
「あ、やっぱり?でも、何がおかしいのかさっぱり……」
『この位置だ。確かこの地点は港もなければヘリポートがあるわけでもない。おまけに海底は岩場だらけでわざわざ外から近づいてくる物好きもそうはいまい。船で来るというのなら港のそばを指定すれば済む話だし、飛行機やヘリも同じことだ。なぜわざわざ、こんなかけ離れた位置に移動する必要がある?』
「な、なるほど」
言われてみれば確かにそうだ、これでようやく謎が解けた。でも、そうなると吹雪さんの意図がわからない。余計にこんがらがってきた僕を見かねたのか、ここでチャクチャルさんから2隻目の助け舟が出向する。
『そういう時はな、マスター。まずは前提から疑ってみることだ。そもそもこれは、本当にあの男が作ったものなのか?』
「……どゆこと?」
『私も五千年近く人間を見てきたから考えている大抵のことはその言動を見れば予想がつくが、あれだけ友人のため真剣になっていた人間がこんな馬鹿げた広告を作る余裕があるだろうか』
……ふむふむ。さすがは長生きしてるだけのことはある。言われてみれば、今日の吹雪さんは真剣だった。いつものウクレレアロハシャツだとか10JOINだとかが吹っ飛んで見えるぐらい真剣だった。こんなにエンターテインメント性の高いチラシなんて作るだろうか。それにそもそも、明日のデュエルはダークネスの力を解放する吹雪さんにとってもあまり観客に来てほしいようなものではない
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