五年後
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、ここに入っていったような気がしたのだけれど……」
「いや、見てませんよ。 ……それより、リリアさん。その手に持っているものは?」
銀髪碧眼のエルフ、リリア・エミルカ。
【バルドル・ファミリア】の紅一点にして、自称【ハーチェスの嫁】
彼女の手に持っている皿に盛られた毒々しく、ブクブクと泡が沸き立っているそれを指差して俺は言った。
「シチューよ! 私が、ハーチェス様のために作ったの! どうしてもって言うなら、式も食べていいわよ?」
「いや、そんなハーチェスさんへの愛情こもったもの食べれませんよ。遠慮しときます」
「そう? ウフフ、分かってるじゃない」
物陰から激しく動揺している気配を感じるが、きっと気のせいだろう。
チラリと見えた顔がかなり青ざめていたのが印象的だった。
「でも、何処へ行ったのかしらねぇ……。 仕方ない、犬でも連れて来ましょうか」
「誰が犬だ誰が」
リリアさんがそう言うと、厨房の方から出てくる影。
特徴的なのは、頭の耳と尻尾。狼人の男性だ。
「あら、ヒル。丁度今探そうとしてたのよ」
「頼み事するやつを犬呼ばわり……」
ケッ、と悪態をついていたヒルさんは言葉を途中で切り、リリアさんが手に持ったシチューという名の何かを見て顔をしかめた。
「おい、なんだそのクソみてぇな臭いをするやつは」
「シチューよ。それ以外の何物でもないわ」
「……そうかよ…」
どうやら、ヒルさんまツッコムのは諦めたらしい。
先程の態度から一変し、リリアさんをどこか可哀想なものを見る目で見ていた。
「それよりよ、ヒル。あなたハーチェス様見なかった?」
「あ? 団長? ………いや、知らねぇな」
「は? あなたのその鼻は飾りなのかしら?」
「なわきゃねぇだろ。 そのゲテモノのせいで鼻がイカれてんだよ」
やってらんねぇ、と文句をこぼしたヒルはまた厨房へと戻っていく。
どうやら、パディさんが掃除している間の代役らしい。
言葉に似合わず家事のできる御方だ。
「……パディの犬のくせに」
「ンダトゴラァ!! あと、俺は狼……」
「ヒル、何で遊んでいるのかな?」
リリアさんの呟きが聞こえたのか(流石、狼である)、ヒルさんは厨房から顔を出して怒鳴り声をあげる。
がしかし、ヒルさんの続きの言葉は掃除を終えて戻ってきたパディさんの声に遮られた。
「ぱ、パディ!? あ、いや、これはリリアのやつが……」
「人のせいですか? 余所見をして? 沸騰してるのも無視してですか?」
最後にはヒルさんが謝る声が厨房から響いた。
恐るべし、パ
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