五年後
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「いえいえ。これは僕の仕事ですからね。これも執事の勤め」
いつもと変わらない優しそうな笑顔のパディさんに言われた通り、俺もスウィードも今しがた座っていたソファーから退いた。
無人となったソファーを手早く慣れた手つきで掃除していく。
「……今更なんですが、何でパディさんが掃除を?」
「あぁ、それな。あの人、夢が執事らしい」
「…………え? それだけですか?」
「おう、それだけだ」
パディさんが掃除をする姿を眺めながら俺とスウィードは会話を続けた。
時間にして三分も経たずにファミリアの団員計九人が座れるほどの大きなソファーがきれいになっていく。
……てか、この人ほぼ毎日掃除してるから掃除する前もそれほど汚れてないんだが……
「ダメですよ。掃除は毎日が基本ですから」
「普通に心の中を読まないでくださいよ」
「執事ですので」
「なにそれ怖い」
ちなみに、エセとパディさんに向けて言うのは厳禁だ。
過去に一度、そう言ったバカがいたのだが、Lv差があるにも関わらずにボッコボコにされていた。何があったのかは怖くて聞けなかった。
「それと、あと二時間ほどで夕食ですので、遅れないように」
「あ、了解しました」
「パディさんの料理、美味しいですもんね」
味を思い出したのか、スウィードの口からよだれが垂れる。
気持ちは分からんでもない。なんせ、本当に美味しいのだから。
「フフ、ありがとうございます」
誉められたことが満更でもなかったのか、パディさんは嬉しそうに目を細めて部屋から去っていく。
と、ここで入れ替わるようにして部屋にとある人物が現れる。
「し、式! スウィード! ちょっと匿って!」
「団長?」
「ハーチェスさん、どうしまし……あぁ、リリアさんですか」
?と首をかしげているスウィードに、俺はいつものことだから、と伝える。
駆けてきたのは他でもない、この【バルドル・ファミリア】の団長であるハーチェス・ザイル。
五年前の零細ファミリア時代から所属していた最古参のヒューマンである。
「そうなんだよ。夕食前にあんなの食べたら……」
「ハーチェス様ー!!」
「き、キタァ!?」
自らを呼ぶその声に、ガタガタと震え出すハーチェスさん。
今年で二六歳にもなる男の、まして団長の見せる姿であるとはとても思えないが……
「とりあえず、そこの物陰に。俺が何とか誤魔化しますんで」
「た、助かる式!」
慌てて部屋の片隅に置かれた棚の陰に身を潜めたハーチェスさん。
そして、ハーチェスさんが隠れた直後に部屋に入ってきた一人の女
「あれ? 式、ハーチェス様は? 確か
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