第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
12話 生存者達
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その異常な有効範囲も蛇足程度にしかならないが、周りから他の小隊を呼び寄せるようなスキルが追加されたとするばらば、危険性は急激に跳ね上がる。今回の多数のエルフとの戦闘では奇跡的に攻撃を封じる形での発動であったが、仮にダメージ量と敏捷を上昇させる《ブリッツ・カーネイジ》を使用されていれば、間違いなく全滅していた。この最悪のシチュエーションが、オフィサーとの戦闘の際には常に高い確率で懸念されることとなるのだ。二層との難易度の差を考慮しても、素直に納得できない。
「不謹慎かもしれないけど、そのスキル、どのくらいの頻度で発生しているんだ?」
「昨日の一回だけだろーナ。それ以外では聞いてないんだカラ。でも、戦闘中に周囲から突然増員が駆けつけてきたらしイ。特殊なモーションも無かったそーダ。オイラも慌てて改訂版を出したけど、気を付け様もないし、難しいよナ………」
昨日、つまりは当の犠牲者が出た戦闘以外では未だ確認されていないということか。使用確率が低いのか、単に引っ掛けてしまったのか、ましてや発動時のモーションさえ確認出来ないのでは現場に同席したところで判断のしようのない内容である。しかし、キャンペーン・クエストやギルド結成クエストで森に踏み入るプレイヤーは必然的に多くなるはずだ。エルフとの戦闘が相対的に増えれば、同様に犠牲者の数も増えかねない。警戒してくれればいいのだが、第二層の攻略ペースの速度を見るに、正しく今は勢いがついている時期だ。流れがプレイヤー側にある、警戒心が脆弱になるタイミングだ。果たしてオフィサーとの戦闘を警戒するプレイヤーがどれほどいるだろうか。
「そんなわけで、あの子達は自分のPTが死んだことが実感として持ててないんだろーナ………ああやって、よく森に行ってるんだかラ」
彼女達の話は無理矢理締め括り、溜息を吐く。アルゴ自身も死んでしまったプレイヤーに対してこれ以上触れたくないという意思表示なのだろう。
彼女達は突然仲間を失った。理不尽なスキル一つで戦況を悪化され、手痛い傷を負った。俺ならば、どうするだろうか。現実として受け入れられるだろうか。ふと、そんな疑問が過った。如何に共に戦っているとはいえ、ヒヨリを守ることが俺の行動指針である。自分でさえそれは深く認識していて、ヒヨリが無事でいることが、恐らく俺の精神を保てる唯一にして最大のファクターだ。仮に、その場で命を失っていたのがヒヨリであったら、俺はどうなっているだろうか。不意に膨れ上がった疑問が恐怖を影のように落としながら首をもたげて見下ろしてくるような、そんな言い知れない不安に駆られた。彼女達に刻まれた苦痛は、ともすれば自分達にだってあり得るのだと、まざまざと痛感する。
「湿っぽくなっちゃったナ………とにかく、ダ。そこでオイラは例の
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