第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
12話 生存者達
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話もなく手持無沙汰でいると、髪を緑に染めた少女――俺よりは間違いなく年上に見える――が、おずおずと視線を向けてくるのに気付いた。
「茶は苦手だったか?」
「いや、そうじゃなくて、その………変な事聞くかもだけど、キミ達も森を探索してたんだよね……?」
「まあ、そうだな………?」
会話が途切れる。というよりは、そこから先に進展させるのを躊躇っているようにも思える。話したいことは定まっているけれど、口に出せないとでも言いたげな、苦しげな表情が見て取れた。しかし、向こうの話を聞くまではどうしようもないし、ここから話題を切り出せるほど俺は強くないのだ。再び時間が経過してゆくかと思われたが、それも束の間、アルゴが口を開いた。
「………もう捜索は止めたほうがイイ。今回は運が良かったけド、次は無いゾ」
《鼠》のアルゴから告げられた、あたかも抜き身の刃じみた言葉を受けた緑髪の少女は、悲痛な面持ちで俯いてしまった。小柄な少女に至っては、今にも泣き出しそうだ。そんな中、今度は黒髪を後ろで纏めた、長身で大人びた印象の少女が席を立ち、アルゴの前に歩み出る。
「アンタ、情報屋だか何だか知らないけど、アタイらの行動に口を挟ねるほど偉いのかい?」
「………何度も死にかけてるのに、またリスクを冒すのもナンセンスだと思うけどナ」
アルゴに相対する少女からは今にも胸倉に掴みかかりそうな殺気が漂う。交錯する視線、一触即発の空気は運良く不発でいてくれた。
「………ふざけやがって、何が情報屋だ」
しかし、他のPTメンバーが不安そうに見守るのに気付くと、深呼吸のような溜息を一つ漏らして、少女は踵を返して玄関へと向かう。
「ごめんなさい。嫌な雰囲気にしちゃった………帰るね?」
辛そうな笑顔を向けて「助けてくれてありがとう」と最後に告げられ、借家から去ってゆく。他の少女も次々に出ていくのを何も出来ずに見送ると、アルゴは溜息を吐いて項垂れる。
「………外で話そうゼ?」
今の遣り取りの一部始終を見てしまっては、もう無関係でいるのも難しいのかも知れない。
バルコニーを視線で示すアルゴに頷き、ガラス張りの引き戸を開けて外に出る。低層とはいえ、きっちりとした矩形で構成されていないが故に階層ごとの天井までの高さや床の厚さもまちまちなため、3階という位置にありながら地上50メートルは離れている。枝は天辺に密集して生えていることから視界は開けていて、眼下に広がる緑の絨毯を余すことなく一望できた。
バルコニーの引き戸を締め、指示されたとおりに施錠すると、アルゴは既に端に寄りかかって景色に目を落としていた。横に立つと、アルゴは語り出す。
「まさか、リンちゃん達があの子達を助
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