第七十九話
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聞き慣れた金属音が規則的に響いていき、鉄と鉄がぶつかる感触が拳に感じられる。それを数十回と試行すると、打ちつけられていた鉄は、いつしかその姿を変容していく。彼女はこの瞬間が好きだった――新しい何かが生まれるのを見届ける瞬間が。
「ふぅ……」
持っていたハンマーをくるくると回して肩に置くと、リズは変容していくインゴットを見ながら一息ついた。インゴットは事前に設定された通りに、片手剣として生まれ変わっていき、どのようなものか精査された後に品物に出されることとなる。自前の鑑定スキルを使って、なかなかの出来映えだと満足していると、その工房の扉が叩かれる。
「はーい!」
今日の来客の予定は1人のみだ。彼女だろうと当たりをつけて挨拶を返すと、予想通り、青色のロングヘアがまず視界に飛び込んできた。
「こんにちは、リズ」
「やーっとノック出来るようになったわね、アスナ」
リズは一旦片手剣をそのままにしておくと、少し遅れてやってきた親友に笑いかける。アスナは「まあね」――などと言って笑い返すものの、まだテンションが上がっていたり慌てていたりすると、ノックを忘れることもしばしばある。彼と再会出来た、アインクラッドの後半の時期のような――
「ささ、入った入った!」
――何てことを少し懐かしく思いながら、リズは常備されているコーヒーを用意しながらアスナを迎え入れる。また、少々乱雑に積み上がっている物を力づくで端に寄せながら。、
「うん、お邪魔するね」
そんなリズの様子を面白そうに少し見学し、机と椅子の準備が出来たのを見るとアスナはリズベット武具店へと入っていく。店番は店員NPCに任せることにすると、二人の少女は店の奥でまずは一服する。
「わ! このコーヒー美味しい! リズが作ったの?」
「あたし? あたしには無理無理、ショウキの奴よ」
コーヒーを自分好みにしてかき混ぜた後、ゆっくりと一口飲んだアスナは、料理スキルをカンストした者として驚愕を顕わにする。アインクラッド時代から飲み物を自作していた彼のスキルは、もちろんコーヒー作りにも発揮され――アスナのように料理が出来るわけではないが――リズの舌を唸らせていた。……コーヒー好きとしては少し悔しくもあるが。
「あいつがたまにコーヒー用の素材とか取ってきてたり、ね」
「へぇ……今度教えてもらおうかな。……それで、そのショウキくんのことなんだけど」
「……あとキリトのこともね」
『アルバイト』に出かけている二人のことを口に出すと、やはり少々空気が重くなったように感じられた。菊岡誠二郎からのバイトは今に始まったことではなかったが、今回のバイトは特に様子がおかしかった。どちらも問い詰めたりしてはいないが、そんなことは見てい
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