第七十九話
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ない……」
彼女が曲がり角を曲がる。遅れること数秒、俺もその曲がり角をしっかりと曲がって彼女の視界に入ると、そこから一瞬で消え失せた。先程まで後ろにいた俺の姿が消えたと、リーベはどうなったか確認しようと走るのをやめ、立ち止まって背後を振り向いた。
「えっ……!?」
高速移動術《縮地》。リーベの視界の死角から死角へ飛び込み、立ち止まっているその隙に背後へと現れると、手首を掴もうとそのレースがついた腕に手を伸ばす。
「……おっと! お触り厳禁だよ!」
しかして、流石に移動した距離が長かった分、リーベが反応してしまうのも早く。まるで糸のように、スルリと俺の手から逃げられてしまう。倫理コードのこともあって、全力で掴もうとしなかったこともはあり、リーベは俺の手の射程距離ギリギリを維持する結果に終わる。
「スゴいスゴい! ねぇ今どうやったの?」
「……この鬼ごっこを終わらせたら教えてやる」
目を輝かせながら問うてくるリーベに辟易しながら、ポツリとそうなって欲しいという本音を零す。リーベは自らの指を頬に当てると、「んー……」と考えるような動作を示すと、自然な動きで後ろにステップを踏んだ。
「それは嫌かな、捕まえるまでが鬼ごっこです!」
予想通り、リーベはよく分からないことを楽しそうに話しながら、ステップを踏みながら俺から逃げだそうとする。表通りに逃しては厄介だと、戻ろうとしたリーベの進路に割り込むと、リーベは一瞬だけ驚いた顔をしてまたもや路地の奥へ進んでいく。一度進もうとした場所は俺の《縮地》で阻まれ、退却しようにもそれは俺が妨害したが、リーベにはまだ一つ曲がり角という行き先がある。
しかし、その行き先は罠だ。リーベと二人でしばし走った後、その道は袋小路となっているのだから。
……要するに、行き止まりだ。
「よくこっちが行き止まりって分かったね、ショウキくん!」
もちろん、この裏通りに詳しいらしいリーベが、そのことを知らない筈もなく。壁を背にキッチリとした態勢で振り向くと、息を整えながらこちらに笑いかけた。
「生まれつき目は良いもんでな」
……今まであった曲がり角には目もくれなかったのに、先の曲がり角だけは曲がろうとしたリーベ、という違和感がまずは決め手だったが。ALOと違って電気やガスが流通しているこの世界は、裏通りだろうと奥まで見やすいという事もある。
「さあ、鬼ごっこは――」
「え? もしかしてショウキくん、行き止まりから逃げられないの?」
二度目の鬼ごっこ中止勧告に、心底不思議そうな顔をしたリーベが、首を傾けて疑問の意を示した。その言葉で、今から彼女がやろうとしていることを察したものの、もうすでに時は遅く。リーベは巨大な壁のようにな
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