2部分:第二章
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第二章
「チーズを使おうか」
「チーズを?」
「チーズを使ってというのか」
「陛下はチーズがお好きだ」
ナポレオンの好物のことはわかっていたのだ。側近を務めているだけはある。彼のそうした食べ物の嗜好はよく認識していた。
それでだ。チーズを寝ている彼の傍に持って来てだ。それで起こそうというのである。好物の匂いを嗅げばそれで起きるだろうというのだ。
他の側近達もそれを聞いてだ。その方法ならば下手に声をかけたり身体をゆすったりするよりずっといいだろうと思った。こうしてである。
皿の上にチーズが山盛りに乗せられそれをナポレオンの鼻元に持って来た。するとだ。
ナポレオンはだ。こう言ったのである。
「ジョゼフィーヌ、今晩は疲れているから駄目じゃ」
こう言ってだ。手で払う仕草をしてだ。そのチーズの皿を遠ざけたのである。持っていた側近はその払われた皿からチーズを落とさないように必死になった。その後ナポレオンを起こすのに少し苦労することになったのは言うまでもない。
この時何故彼が皇后であるジョゼフィーヌの名前を言ったのか。チーズの匂いが彼女の体臭に似ていたからだと言われている。それで間違えたのだという。英雄にもこうした逸話があったりする。彼もまた人間であり好物もあればこんな話もあるものである。人間ならば誰でもである。
チーズの匂い 完
2011・4・5
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