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赤い男
2部分:第二章
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第二章

「そんな頃の話か」
「左様です」
「エジプトにおられた時とは」
「そうです。まあとにかくです」
「皇帝陛下は会われる」
 それは間違いないというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
 こうして皇帝の執務室に案内される。するとだ。彼がいた。
 小柄で軍服も妙にだぶついて見える。身体は全体に丸い感じだ。少なくとも筋肉質ではない。
 額は広く髪が薄くなってきている。顔自体もあまり男性的ではない。やはり女性的な感じだ。青い目は何処か眠そうである。その彼こそがだ。
「陛下、お邪魔しました」
 男は彼を陛下と呼んだ。即ちこの男こそフランス皇帝ナポレオン=ボナパルトであった。軍神とさえ謳われ欧州を席巻した男である。
 だが目の前のその英雄はだ。今はだ。
 英雄には見えなかった。赤い服のその男をだ。神経質そうに見ていた。
 そうしてその神経質なものになった顔でだ。彼にこう問うのであった。
「早かったな」
「私がここに参上したことがですか」
「そうだ、早かったな」
 今度はこう彼に言ったのであった。
「思ったよりな」
「それは陛下が思われたよりもでしょうか」
「そうだ」
 まさにその通りだと答えるナポレオンであった。
「まさか今とはな」
「今ではありません」
 男はそれは否定した。今部屋にいるのは二人だけである。その為かナポレオンは少なくとも本音を出していた。彼の本音をである。
「その時はです」
「しかし来たではないか」
 ナポレオンはこう男に返した。
「実際にだ」
「それはその通りです」
「それはそのまま私の運命がだ」
 ナポレオンは言い続ける。明らかに普段の彼ではなかった。
「決まったということだな」
「はい、それもまたその通りです」
「それを告げに来たのだな」
「陛下、お言葉ですが」
 男はナポレオンとは対象的に落ち着いていた。
「何事も終わりがあります」
「私にもだな」
「はい、人にもまた」
「それでか。来たのか」
「そういうことです」
「では私はどうなる」
 ナポレオンは項垂れる顔で彼に問うた。
「これから」
「戦いに負け続け」
「この私がか」
「はい、敗れ続けます」
 そうなるというのであった。
「寂しく。孤島で死にます」
「フランスでは死ねないのか」
「残念なことだとは思いますが」
「そうか、わかった」
 ナポレオンは唇を噛みながら述べた。
「私はそうなるのだな」
「はい、しかし」
「しかしだと」
「貴方はまだいいです」
「私はいいのか」
「後世に英雄として語り継がれます」
 そうなるというのだ。彼はだ。
「これから出る二人とは違いです」
「それを見てきたのだな」
「はい、私は見てきました」
「そうか。私は英雄と
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