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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第118話 歴史改竄
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ーアウト満塁。点差はこれ以上、広げられるとかなりマズイ三点差。
 セットポジション。その瞬間にアガレスの能力を発動。自らの時間を自在に操る能力の行使。そして、その術に続き肉体の強化も行う。

 刹那。
 あらゆる色彩を失い、完全に凍結した世界――時間の中、動かない身体と、明晰とは言わないまでも普段通りに動き、考える事を止めない頭脳とのギャップに違和感を覚えながらも投球動作を行う俺。
 大きく足を上げ、軸足に乗せた体重を前方へと踏み出す。スムーズな体重移動と、そして同時に生来の重力を操る能力を駆使して、踏み出したスパイクを履いて居ない足が滑り、体勢が崩れる事を防ぐ。
 腕を大きく振り、灰色に染まる空気を切り裂き、リリースの際に一瞬の間を置く事により打者のタイミングを外す――

 普段は感じる事のない圧力。この状況では、未だこちら側に有利な形での陣を敷く事に成功していない、と言う事になる。ただ……。ただ、このままでは望みの効果を的確に与える事が出来ない可能性もゼロでは有りませんが……。

 音速の十分の一よりは勢いのある球が、立ち上がった有希のミットを目指して一直線に――
 いや、違う。確かに高さは立ち上がった有希の顔の辺りを目指している。しかし、コースが違う。ボールは、そのままホームベースの真上を通過。
 そして――

 そのままバックネットに直撃。大きく跳ね返ったボールを有希がキャッチ。その時には既にホームベースのカバーに入って居た俺へとボールをトス。
 この一連の流れがほぼ瞬時に行われ、キャッチャーのミットに触る事すらないワイルドピッチ状態であったにも関わらず、サードランナーは一歩も動けずに終わった。

 まぁ、サードランナーは鈍足の八番キャッチャーの選手。ノーアウト満塁で、少々ボールが逸れたぐらいで無理に突っ込んで来る必要はなし、……と判断しても仕方がないでしょう。
 流石にキャッチャーらしい状況を見た良い判断だ、と誉めるしかないでしょうね、これは。
 それに今回の目的はサードランナーをおびき出すのが目的などではなく……。

「審判さん、すまなんだな。どうにも力み過ぎて、コントロールがままならなんだわ」

 まぁ、俺がノーコンなのは知っているから、きっちり避けてくれたみたいやな。これなら身体の方は大丈夫やろう。
 サードランナーを目で牽制してから、ホームベースの向こう側で無様に尻もちをついた状態で座り込んでいる野球部所属の主審にそう話し掛ける俺。

 そう、今回のピッチドアウトの目的はコイツ。この俺たちの足を引っ張る事しか考えていない下衆の耳元を速球で抜けさせるのが目的。

「もしかするとこれからもチョイチョイ、すっぽ抜けたボールが行くかも知れへんけど、勘弁してくれよ」

 何せ、俺って十六球も
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