六十話:失った悲しみ
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めるオーフィスだったがすぐに動かしスープを口に運び出す。しばらく、スプーンと皿がぶつかり合う音だけが響いていたが、やがてボソリと小さな声が紡がれる。
「……おいしい。ヴィクトルのと違うけど……おいしい」
「ありがとうな」
ルドガーはおいしい、という作り手にとっては何よりも嬉しい言葉に笑顔を見せる。だが、その裏に隠された想いを察してすぐに目を真剣なものに変え黙って次に出てくる言葉を待つ。オーフィスはそんな彼の気持ちを知ってか知らずかは分からないが小さくも重い言葉を絞り出す。
「どうして……ヴィクトルは来てくれない?」
「もう……どこにもいないからだ」
「それなら、我も居なくなる!」
悲しみの余り自分も居なくなると絶叫するオーフィスに顔を後悔と悲しみで歪ませるルドガー達だったが目は決して逸らすことはしない。重い軽いということに関係なく犯した罪は消えない。いくら悔い改めようが、善行を行おうが消えることはない。だからこそ罪人に出来ることは全てをその背中に背負い歩き続けて行くことだけなのだ。
「悪いがそれは認められない」
「何故!? 我は―――」
「あいつにとって何に代えても守りたいお前を託されたからだ」
オーフィスの言葉を遮りルドガーが静かな声で告げる。オーフィスはルドガーの言葉に呆気に取られたように瞳を大きく開ける。すぐに、その瞳からは涙が溜まっていき、静かに頬を伝ってスープの中へと零れ落ちていく。顔を俯かせて体を震わせながら彼女は力なく言葉を紡いでいく。
「人間弱い…我は強い…それなのに守られるのは……変」
「それでも守りたいと願うのが人間なんだ。
だから……あいつの最後の願いを叶えてやってくれないか」
「――――っ!」
響き渡る泣き声。それは悲しみの涙。されど、少女が一歩進むためには必要な涙。その涙を流す原因を作ったルドガー達はただ、ただ、少女の気が済むまで待ち続けるだけだった。
月の無い空の下でポツンと一人座り込み空を見上げる。やっぱり子どもの泣き顔を見るのは辛いな……。どうして俺は誰かを泣かすことしか出来ないんだろうな。いや……今さらか。俺が今までやって来たことは壊すことだけだ。壊すことでしか何かを守ることが出来ない。何も犠牲にしないと誓っても結局、壊してしまう……所詮、夢は夢でしかないのか?
「いや、それでも俺は……諦めたらいけないんだ」
言葉は闇の中に消えていくが心の中では消えない。無理かもしれない。ただの夢見物語かもしれない。それでも足を止めることだけは出来ない。例え、ゴールが幻想だとしてもそこに向かって歩いた事実は偽物じゃない。俺が歩いてきた道が本物だと証明し続けるためには歩き続けるしかないんだ。例えこの身が燃えつきようと最後まで歩み
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