六十話:失った悲しみ
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イッセーがリビングに降りて行ってみるとルドガーが一人椅子に座っていたので自分のように早く起きたのかと思い挨拶をするがそこである事に気づき息をのむ。出来るだけ笑顔を見せようとした結果酷い顔をしたルドガーの左目の下には濃い隈が出来ており、一睡もしていないのが明らかだったからだ。
「ルドガーお前……」
「これが俺の選択だ。後悔なんてない」
オーフィスは来なかったのだ。ルドガーが一晩待っても来ることは無かったのだ。それを悟ったイッセーは思わず涙を零しそうになるがすぐに何かを決意してルドガーの隣の椅子に座りながら宣言する。
「ルドガー……俺も今日はオーフィスが来てくれるまで待つ」
「お前がそこまでする必要はないさ」
「いや、苦しむ時は一緒にだ。お前が嫌でも無理やり待つ」
有無を言わさない強い言葉にルドガーは一瞬目を大きく開くがやがて自然な微笑みを浮かべる。
「……ありがとうな」
その後も起きて来た者達が二人を見ると何事かを察して無言で加わっていき、結果的にイッセーの両親を除くこの家にいる者全員がオーフィスを待つことになった。さらにそこに尋ねて来た祐斗とギャスパーが加わりオカルト研究部全員が揃う事となる。その中で黒歌だけはルドガーと同じように目の下に隈を作っていたのは、彼女もまた一睡もせずに待ち人を待ち続けていたからだろう。
彼等は会話をすることもなくただひたすらに一人の少女を待ち続ける。いつの間にか日が高く昇ったかと思えば沈んでいき辺りは闇に包まれていた。しかし、少女は一向に姿を現す気配がなかった。それでも彼等はただひたすらに待ち続けた。必ず立ち直ってくれると信じて。さらに時は進み、そろそろ草木も眠る時間になった時、小さな足音が彼等の耳に聞こえて来た。
足音は徐々に大きくなっていきやがて彼等のすぐ傍で止まる。
「お腹空いただろ。スープを作ったんだ。……食べるか?」
無言で頷く少女、オーフィスに微笑みかけながらルドガーは温め直したスープを皿に注ぐ。朱乃がオーフィスの手を優しく引いて椅子に座らせる。そこにルドガーのスープが差し出される。オーフィスはしばらくスープを何も映っていない目で見つめているだけだったがやがてゆっくりとスプーンを手に取り一口、スープを口に含んだ。
「……似てる。でも……ヴィクトルのスープと違う」
「ああ、違う。それが俺とあいつの違いだ」
「我の食べたいものじゃない」
「……そうだな。もっと言ってくれても構わない。食べたくないなら捨てたって構わない」
似ているという言葉に複雑な顔をしながらも似ているだけだという信念の元に違うと言い切るルドガー。そして、食べたい物ではないと告げられるが彼はその言葉を受け入れて食べなくてもいいと言う。彼の言葉にスプーンを一瞬止
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