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鋏と花
鋏と花 プロローグ

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 桜吹雪の舞う春。学校までの坂道は、両側に植えられた染井吉野の花びらで桃色に染まっている。空も快晴で、舞い上がった桃色の花びらたちで染められている。
 公立静桜高校の大きな校門をくぐり、広い広場に向かう。新学期の新しいクラス発表を見に行くためである。
 昇降口前に大きな板が待ち構えてある。縦はあまり大きくないが、横幅が百人は並べそうなほどの長さがある。1,2,3年すべての学年のクラス発表をまとめてしているからだそうだ。
 真ん中の2年のC組欄から『サクライ ハルト』の名前を見つけ…、あいつの名前がないか探してしまう。
 少ししてから『タチバナ マコト』の名前を見つけて、ほっとする。今年も同じクラスになれたみたいだ。が、苦労も付いてくる。そのことは今は忘れよう。
 
 始業式数分前の体育館は騒がしく、なんとなく浮かれている。椅子に座って携帯を触るやつ。友達であろう人と喋っているやつ。色々いるが、タチバナはまだ来ていないようだった。あいつは色んな意味で目立つから、すぐにわかる。
 突然、ブツッとマイクの入る音がし、あたりが静かになる。始業式が始まるようだ。
「在校生代表の言葉」
 教頭のナレーションが入り、生徒がステージに上がる。
 首筋にかかる長さの黒い髪。着慣らされた紺のノースリーブセーターとグレーのズボン。
「在校生代表、タチバナ マコト」

 ステージに立ったのは、俺の好きな人でした。
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