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戦国異伝
第二百十二話 死装束その八

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「必ずな」
「それが殿のお考えですか」
「そうじゃ、例えるとな」
 今度の例えはというと。
「本願寺の中におったな」
「顕如殿もご存知なかった」
「あの者達が着ておった闇じゃ」
「あの様な闇ですか」
「全く得体が知れぬ」
 それこそ、というのだ。
「だからな」
「そうした闇は払い」
「消していく」
「そうされますか」
「あの闇、何故か延暦寺にも高野山にもあったが」
「あれも妙ですな」
「消していくわ」
 こう利休に言うのだった。
 そしてだ、信長はこの話もした。
「もう一つ気になることがあるわ」
「といいますと」
「浅井家のじゃ」
「あの黄金の髑髏ですか」
「あれは左道じゃな」
 確実に、というのだ。
「そうじゃな」
「ですな、あの様な術は知りませんが」
「しかしな」
「はい、あの術は」
 間違いなくとだ、顕如も言った。
「左道に間違いありませぬ」
「そうじゃな」
「左道の中でも」
 それこそ、というのだ。
「とりわけ邪な」
「そうした術じゃな」
「間違いなく、しかし」
「しかしか」
「それが何かは」
 そこまでは、というのだ。
「それがしもわかりませぬ」
「妖術の類でもな」
「蠱毒とも違う」
 左道の中でもとりわけ邪なその術とも、というのだ。
「違うか」
「ううむ、何か」
「全くじゃ」
 また言った信長だった。
「あれは怪しい術じゃった」
「久政殿は非常に穏やかな方でした」
 利休はこのことも言った、彼についても。
「しかし急に変わられました」
「比叡山から来た二人の僧侶によってな」
「無明、そして」
「うむ、法界坊じゃな」
「あの者達が来てからです」
 まさにというのだ。
「変わりました」
「そうじゃったな」
「そして猿夜叉様も」
「猿夜叉は親孝行じゃ」
 このことについてもかなりの者である、一度父を謀反で隠居させてからその念は余計に強くなったのだ。父にそうした罪の意識から。
「だからあの御仁を止められなかった」
「そして、でしたな」
「わしに弓を引いてしまった」
「あの時は何とか猿夜叉様を失わずに済みましたな」
「危ういところじゃった、しかし」
 それでもと言う信長だった。
「あの髑髏はな」
「間違いなく」
「あの二人のものじゃ」
 無明、そして法界坊のというのだ。
「あの二人が左道を使い」
「そのうえで」
「久政殿を惑わしておった」
「そうとしか思えませぬな」
「そしてあの様になった」
 浅井家は織田家を裏切り戦になった、金ヶ崎の退きも姉川の合戦もその後の朝倉宗滴との戦も小谷城攻めもだ、全てがだ。
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