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戦国異伝
第二百十二話 死装束その五

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「老中や若年寄は石高の小さな大名ですか」
「大きな大名は用いぬ」
 政の軸にはというのだ。
「さらに力を持たせることは危うい」
「そこまでお考えですか」
「だから茶器も他の宝もふんだんに送ったのじゃ」
 論功においてというのだ。
「そうしたのじゃ」
「領地ではなく」
「それじゃ」
 茶器やそうしたものだというのだ。
「多く与えたのじゃ」
「特に茶器ですな」
「うむ、領地には限りがあるがな」
「茶器は、ですな」
「幾らでもある」
 それこそ、というのだ。
「だからじゃ」
「幾らお渡ししてもよく」
「わしも与えたのじゃ」
「左様でしたか」
「あと書や絵、筆もな」
 そうしたものもというのだ。
「これからはな」
「より、ですな」
「与えていく」
 論功、そして褒美にというのだ。
「国に匹敵するだけのものをな」
「そうして領地をですか」
「土地は限りがあるからな」
 それで論功や褒美で渡すことは減らすというのだ。
「そうしていくわ」
「そこまでお考えとは」
「天下の為じゃ」
 その全ては、というのだ。
「あまり大名の力が大きいとな」
「そして領地を与え過ぎると」
「それで二つの幕府が滅んだ」
「室町は守護大名の力が大きく」
「鎌倉は与える領地がなくなった」
 それぞれそれが理由となって、というのだ。
「そうなったからな」
「そのことを踏まえて」
「うむ、領地も渡すが」
「それ以上に」
「茶器や宝、そうしたものをな」
 与えて、というのだ。
「褒美としていく」
「どれも高いですが」
「しかし領地には限りがあるがな」
「茶器等はそうではない」
「だからやれるのじゃ」
「論功なくして家はまとまりませんな」
「健全な、な」
「その通りですな」
 利休も信長のその言葉に頷く、そしてだった。
 信長に茶を差し出してだ、こう言ったのだった。
「どうぞ」
「うむ、悪いな」
 信長も茶を受け取り飲みだ、利休に言った。
「今回の論功は終わった、そしてじゃ」
「それも終わったので」
「宴じゃ」
 それを行うというのだ。
「能や相撲もな」
「それもですか」
「大いに行わせる、あと朝廷の方々もな」
 帝や公卿もというのだ。
「お招きしておるしな」
「この安土に」
「大きな茶会、そして連歌会もするぞ」
「それはまた雅な」
「雅もよい」
 実に、と言う信長だった。笑みを浮かべて。
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