第十幕その九
[8]前話 [2]次話
「この辺りがウィンキーの端だったんだ」
「そうでしたね、以前は」
「すぐそこが死の砂漠で」
「それで、でしたね」
「ここが端で」
「もう先には行けませんでしたね」
「それが今ではね」
今のオズの国ではといいますと。
「死の砂漠が大陸の海岸までいって」
「オズの国の端ではなくなったわね」
ガラスの猫もこう言ってきました。
「もうね」
「そうだよ、丁渡ウィンキーの真ん中位かな」
それが今の真実の池がある場所だというのです。
「端から真ん中になったよ」
「真ん中にあれば」
ここでまた言った猫でした。
「何か気分が違うわね」
「うん、何かあちこちに自由に行ける気がするよ」
「端っこにいれば限られた場所にしか行けないって思うわね」
「自然にね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「今はあんたも前よりゆったりとしてないかしら」
「私はずっとだよ」
「ゆったりしてたの?」
「気取ってはいるね」
そうだというのです。
「昔から」
「余裕じゃなくて」
「そう、気取っているから」
それで、というのです。
「余裕とは違うよ」
「そうなるのね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「私も余裕を身に着けたいよ」
カエルマンはお花を探しながら猫に答えました。
「是非ね」
「そうなのね」
「うん、人間余裕があるとね」
それが備わっていると、というのです。
「それだけで随分違うからね」
「だからですね」
「そうだよ、だから備えたいと思ってるよ」
「じゃあ備える為に」
「努力しているつもりだよ」
「昔のあんただとそこでね」
「うん、既に備えているって言ってたね」
まだ村にいた時の自分のこともなのでした、カエルマンは振り返ってそのうえで猫にこう答えたのでした。
「昔の私はね」
「そうだったわね」
「けれど今はね」
「違うわね」
「だからね」
それで、というのです。
「努力しているよ」
「それはいいことね。それでね」
「それで、よね」
「勉強もしているよ」
こう猫にお話するのでした、そうしたお話をしてその銀の菖蒲を探しているとです。
カエルマンは目の前にです、その銀色のお花を見付けました。そしてそのお花の種類を確かめてからアンに言いました。
「王女、来てくれるかな」
「まさか」
「そう、ここに来てくれるかな」
こうアンに言って誘うのでした。
「これだと思うから」
「それじゃあ」
こうしてです、アンはカエルマンのところに来てです。
そのお花を見てです、ぱっと明るいお顔になって言いました。
「これよ」
「このお花だね」
「銀の菖蒲よ」
まさにそのお花だとカエルマンに言うのでした。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ