第146話 救い
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「黄漢升」
正宗はゆっくりと彼女の名を口にした。彼の知る原作知識通りの顔をしていた。彼女は表情は青白く血の気が無かった。
「正宗様、黄漢升にご面識がおありになったのですか!?」
泉は正宗が黄忠の顔を見て「黄漢升」と呼んだことに違和感を覚えたのか質問してきた。
「直接の面識はないが美羽に黄漢升の顔や容姿について説明を受けていた」
泉は微妙な表情になるが正宗の説明に納得したのかそれ以上何も聞かなかった。
「泉、兵達を下がらせよ。今から黄漢升の治療をする」
正宗は黄漢升の体を気遣いながらゆっくり起こし仰向けにさせた。彼女の右肩の辺りの衣服の布地が大量の血で塗れていた。正宗が右手触れて確認すると、彼の右手はどす黒い鮮血に染められ塗れた。彼女は正宗に触れられても身動き一つしなかった。想像以上に体が衰弱しているのだろう。
正宗は右手を黄漢升の右肩に触れ瞑目した。すると彼の右手が黄金色に輝く。その光が伝染するように黄漢升の右肩から徐々に体全体を包んでいった。
「これでいいだろう」
正宗は両目を開くと黄漢升の顔を見つめた。出血よる衰弱により顔色は未だ青白いが規則正しい寝息を確認できた。正宗は安堵の表情を浮かべ立ち上る。
正宗が一階に下りると泉と兵達が駆け寄ってきた。
「正宗様、黄漢升の容態は?」
「もう大丈夫だ。治療は終わった。出血のせいで貧血を起こして気絶しているが問題ないだろう」
「そうですか。正宗様、黄漢升をどうなさいますか?」
「黄漢升はひとまず療養させよ。私の兵の中から女の兵を選び監視役につけてやれ」
「畏まりました」
泉は兵に指示を出しに行こうとした。
「待て。話はまだある」
泉は正宗に向き直った。
「これから直ぐに黄漢升を屋敷へ連行せよ。しばらく目は覚ますまい。まず、彼女を運ぶ大きな板を用意しろ。彼女の衣服は血塗れた服を着せてままでできるだけ衆人の目に晒して連行せよ。黄漢升が生きていることを蔡徳珪に伝わるようにな」
「もし、蔡徳珪が黄漢升から人質を取っていた場合、人質を始末させないためでしょうか?」
正宗は何も言わずに頷いた。
「黄漢升が存命とあらば、仮に蔡徳珪が黄漢升から人質をとっていても手荒な真似はしないはず。人質は生きていこそ意味があるのだ。黄漢升につける見張りは一人だけでいい。変わりに暗兵の監視を十分につけよ」
「黄漢升が口を割らないように蔡徳珪が接触を図るということでしょうか?」
「蔡徳珪が恐れることは黄漢升が口を割ることだ。私が暗殺の黒幕を蔡徳珪と名指しした以上、蔡徳珪は何が何でも黄漢升の口を割らせる訳にはいかない。蔡徳珪の場合、面倒を避けるために黄漢升に刺客を送り込んで来るかもしれん」
「黄漢
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