第146話 救い
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の遺恨は薄れていないようだった。孫権を庇うように甘寧が群衆に進み出る。甘寧の凄んだ視線に群衆は怯む。
「清河王様! 野蛮な孫文台の助成を受けたらいつ寝首をかかれるかわかりません。お考え直しください!」
士大夫風の少女が群衆の輪をくぐり抜け髪を振り乱しながら正宗の前に進み出てきた。彼女は正宗の御前で両膝を着き平伏すると嘆願してきた。正宗はいきなり現れた少女に馬上より視線を向けた。
「そなたの名は?」
正宗は堂々と自分に嘆願してきた少女に言葉をかけた。
「董休昭と申します」
正宗は董休昭の名を直ぐに調べ彼女の正体を知った瞬間、引きつった形相に変わった。
「董休昭、そなたは董幼宰の息女であるか?」
今度は董休昭が驚いた表情で正宗を仰ぎ見るが慌てて平伏し直した。王である正宗がしがない小役人だった父の名を知っているのだから当然と言えた。
「清河王様、何故私の父の名を?」
「そなたの父は精錬な人物と聞いていた。一度会いたいと思っていたところだ」
「真ですか!? 今、この宛県に父は逗留しおります」
董允は正宗に期待に満ちたような声音で答えた。
「そうか。今は急ぎゆえ、後でそちの父に会おう。私と一緒についてまいれ。それで『孫堅を助成を止めろ』と言った理由の真意は何だ?」
「孫文台は野心強き危険な存在でございます。荊州牧と対立しているため、清河王様に協力はするでしょう。しかし、蔡徳珪殿を討ち果たせば必ずや貴方様を裏切るに相違ございません」
董允は正宗に物怖じせず正宗に言った。正宗は孫権と甘寧を目の前にして堂々と孫堅を否定した彼女に面喰らっていた。孫権と甘寧は怒りに満ちた表情で董允のことを睨んでいた。だが、董允は少しも動じていない様子だった。
「清河王様、ご無礼を承知で問わせていただきます。何故、南陽郡大守様を襲撃した刺客の黒幕が蔡徳珪様とお分かりになったのでしょうか? 真逆とは思いますが憶測にて蔡徳珪様を討つと仰られていることはないでしょうね」
「知りたいのか?」
正宗は董允を値踏みするような視線を向けた。
「是非に」
董允は即答した。
「刺客の中に蔡徳珪の妹・蔡勲がいた。その者を斬ったのは私だ」
正宗の言葉に群衆が驚愕していた。董允も同様だった。
「蔡勲の首は蔡徳珪に送ってやった。蔡徳珪は返礼に上絹を送ってきた。証拠は十分であろう」
「清河王様は蔡徳珪の襲撃をお許しになったのですか?」
「そうだ」
董允は正宗を信じられないという表情で見ていた。正宗であれば武力にものを言わせて攻め殺すこともできたはず。それをせず一度は自分の命を狙った蔡瑁を許したと董允は理解した。
「一度目は大目に見てやった。だが、蔡徳珪は性懲りもなく私
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ