暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた
第十六話
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な口が彼女を丸呑みにしようとしたその瞬間―――

 ガスッ・・・!

 化物が仰け反る。

 ガス、ガスッ!

 仰け反る。仰け反る。

 キャスターは、パラパラと何かが降ってくるのを感じた。粉々に砕けたそれは・・・

「コンクリート・・・?」

 ガス、ガス、ガスガスガスガス―――!!!

 初めは散発的だったその音は、次第に連続して聞こえてきた。その度に怪獣は小さな悲鳴をあげ、仰け反り、ついにはキャスターたちから目を離し、小さなコンクリートが飛んできている方向を睨みつける。

 驚異だと、認識したのである。

『GIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 咆吼した。怒り狂っているのだ。このウザったい攻撃は、一体どこから飛んできているのだと、その主を探そうとして・・・

 ゴガン!!!

 これまでとは比べ物にならないほど巨大な・・・コンクリートの()が、縦に高速回転しながら衝突したのである。

『GI―――!』

 更に、悲鳴を上げる暇すら与えられていなかった。何故なら、街路樹(・・・)が一直線に飛んできて、怪獣の蛇のような体に突き刺さったからである。

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 悲鳴だ。これは悲鳴なのだと、その場にいた全員が理解した。何故かは分からない。飛んできた方向を見ても、波を遮るためのコンクリートの壁が壊れているのと、街路樹が一本根元から折れた痕跡しか見つけられない。

(偶然?これだけ連続で起こったことが、偶然(・・)だというの!?・・・ありえない・・・!)

 だが、どれだけ否定しても、それを覆す証拠など見つかりはしない。

 偶然(・・)自分たちが食われる寸前にコンクリート片が風に吹き飛ばされて飛んできた。

 偶然(・・)壁が破壊されて、風で飛ばされて飛んできた。

 偶然(・・)街路樹が折れて突き刺さった。

 どれだけ不審に思おうと、これ以外の回答など存在しないのだ。怪獣は、今も身をよじっている。体に突き刺さった街路樹が痛くて堪らないらしい。

「あ・・・か、カメラ!カメラ回して!早く!」

 肝が据わっているというか。危機が去った途端にスクープだとはしゃぎ出す。

(と、取り敢えず、ここを脱出してからビルの屋上で・・・!)

 しかし、彼女の思惑は果たされることが無かった。

 フッ・・・と。初めからそこに何もなかったかのように、全て消えてしまったからである。あれだけ大きな怪獣が、どこにもいない。彼らは、全員揃って顔を見合わせるしか出来なかった。


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