第十七話
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リューと呼ばれたエルフはシルの声をまるっきり無視して、真偽を確かめるようにまっすぐ私の目を見据えている。
わずか二秒ほどだが、私は目の前のエルフに、背筋が凍るような危機感を抱いた。
この子……本当にウェイトレスなの……?
何度もこの酒場に足を運んでいるものの、特に気を留めていなかったから気づかなかった。リューと呼ばれたエルフの体幹が、末恐ろしいほど整っていた。背から足まで掛けて綺麗な直線を引けるには相当な鍛錬が必要となる。それこそ武人や冒険者を目指さない限り、そんな膨大な鍛錬はしない。
同時に、何気なく下ろされている手だけど、ちょっとでも私が不審な動きを見せればすぐに隠している刃を抜き放ち斬りかかれるように配置されている。もはや暗殺者のレベルである。
どうしてこんな熟練者がこの酒場にいるのか甚だ疑問だけど、それ以上に何で私が目を付けられるのかが謎だった。
この店内にいる従業員、今一度注意深く観察すると、シルを除く全員が並の冒険者では歯が立たないレベルの実力者である可能性が浮上した。
これは主観でしかないけど、この酒場の従業員たち、元冒険者……? だとすれば、確かに不審に思うのも無理無い。魔導書が発動すれば、読者は意識を絶つ。逆に返せば発動しなければ意識が絶たれることはなく、発動しないということは魔法の条件を満たしている可能性がある。
普段駆け出し冒険者としてこの酒場に足を運んでる私が3つも魔法を所持しているのは明らかにおかしい。エルフならまだ説得力はあったものの、私はヒューマンだ。不審者極まり無い。
まあ、それでもこんな殺気立たれる意味が解らないんだけども。
暫く四面楚歌の状態が続いたけど、やがてリューが小さく息を吐いたと同時に殺気の範囲網が解除された。
「失礼しました。その本は少々危険なもので」
「いえ、大丈夫です。それではシルさん、私はそろそろ」
「あ、はい、またのご来店お待ちしております!」
シルの挨拶に押されるように酒場を出ようと擦れ違った私に、リューは言葉と裏腹に終始疑惑の色を浮かべていた。
◆
「もう、リューったらレイナちゃん怖がってたじゃない」
「……ごめんなさい」
「ほんと、どうしてそんな怒ったのか解らないけど、注意してね?」
シルにお小言を頂いたリュー。その彼女の胸のうちは決して晴れやかなものではなかった。ついさっき酒場を出て行ったレイナに関してだ。
リューは落し物という体で置かれていた本、魔導書の正体を知っていた。それは主人のミアも知っていることで、胡散臭いと思いながらも店に害が及ばなければ良い、というぐらいで留めていた。
しかし、まさか冒険者になって一ヶ月も経っていないという少女が|
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