第75話 子供ってのは何処までも我が道を行くもの
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来たかは知らんが―――」
岡田は自分の体にへばりついていたなのはを無理やりひっぺがす。幾ら必至にしがみつこうとしても所詮は子供の力。子供の力では大人の腕力に勝てる筈がなく、安易に引きはがされてしまった。
「返せ返せ返せぇぇ! 私の大事なリボン返せぇ!」
「この高さから落ちれば一巻の終わりだろう?」
一切の慈悲の心もなく、岡田はなのはを掴んでいた手をその場で離した。今、岡田となのはの二人は大海原の遥か上空に居る。しかも、岡田とは違いなのはは空を飛ぶ術を有していない。落ちればまず助かる事はない。そう、岡田は確信していた。
だが、今度はそんな岡田の背後に何かが覆い被さってきた。
「今度は何だ?」
「私のリボン返してよぉ!」
「な!? どうやって戻ってきたんだ!?」
驚愕だった。確かに大海原に向かって投げ捨てた筈。だが、その投げ捨てた筈のなのはが今度は岡田の背中に飛びついてきたのだ。だが、一体どうやって?
「このガキ、一体どうやって戻ってきたんだ?」
「そんな事より私のリボン返してよ! 持ってるんでしょ? あの時私から盗ったんだから持ってる筈だよ!」
「持ってねぇよ。あんな布きれなら、とっくに捨てちまったからな」
「え? 捨てたって……何処に!!」
「さぁねぇ、そんなの知ったこっちゃないねぇ!」
言い終わると突如として岡田はマシンを急発進させた。上空で激しくうねるように飛び回る。背中にへばりついてるなのはを引き剥がそうとしているのだ。現に岡田の背中ではなのはが両手で必至にしがみついている。
「落ちたくなかったら其処でじっとしてるんだなぁ。おじさんは今ちと忙しいんでなぁ!」
「忙しいって……一体何を―――」
必至にしがみつきながらも、なのはは見た。岡田は自身と一体化し、巨大になった紅桜の刀身を振るい、桂派の攘夷志士達の乗る軍艦を切りつけたのだ。巨大な軍艦を刀一本で縦一文字に両断してしまったのだ。真っ二つにされ、海に向かって落ちていく巨大なかつての軍艦もとい、鉄の塊の光景が目の前に映った。そして、その中には大勢の命がいとも容易く消えていく不快で背筋の凍る感覚が過った。
その殆どが苦痛と恐怖の中で消えていく命ばかりであった。嫌な感じがした。人が死ぬ事事態はさほど珍しい事ではない。江戸で暮らしている以上人の生き死にに関わる事は多い。だが、今みたいに大勢の命が一瞬の内に消えてしまう感覚は初めてであった。それを、この岡田と言う男は意図的に行っているのだ。自分の意思で、自分の欲求を満たす為だけに大勢の命を無碍に奪おうとしている。
そして、その岡田の意思に従いあの大きな得物と化した紅桜は猛威を振るう。もし、この男が江戸の市街に入ればどうなるか?
それは幼いなのはでも容易に想像が出来た
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