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駄目親父としっかり娘の珍道中
第75話 子供ってのは何処までも我が道を行くもの
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。何故、銀時は彼女を守れなかったのか。
 幾多の疑念や思いが高杉の頭の中を駆け巡り、かき乱していく。それらは止める事の出来ない強い意志となって高杉を突き動かした。
 そして、気がついた時には、高杉は銀時を殴り倒していた。

「ふざけるな! そんな言い分があるか!? そんな事が理由になるとお前は思ってるのか!?」
「………」

 高杉の怒号に銀時は沈黙したままだった。そんな銀時に早々に見切りを付け、高杉は動かなくなった紅夜叉をそっと抱き上げた。

「こんな場所でこいつを眠らせる訳にはいかない。こいつは俺が葬る。お前には任せられねぇ」
「あぁ、そうしてくれ―――」
「銀時……俺はもう、お前を仲間とは思わん。もし、俺の戦いの邪魔をするような事があったら。俺は容赦なくお前を切り捨てる!」
「……」

 話は其処で終わり、高杉は紅夜叉の遺体を持って戦線を離れた。銀時はその場から起き上がり、手に持っていた刀と、戦場に落ちていたもう一本の刀を拾い上げる。紅夜叉が使用していた刀【白夜】と【桜月】であった。

「主が居なくなりゃ、もうお前らの役目も終わりだ。刀なら刀らしく、戦場で果てろ!」

 銀時はそう言い、白夜と桜月の刀を双方ぶつける形でその場で叩き折ってしまった。どれ程の名刀であろうと、刃が折れてしまえばそれは価値のない物になってしまう。
 銀時は、その価値の無くなった二本の刀をその場に放り捨て、戦線を離れた。





 その夜、紅夜叉は僅かに生き残った攘夷志士達に見守られながら丁重に葬られた。燃え盛る炎の中で横たわる紅夜叉。肉が焼け、骨が黒くなっていく。そして、彼女の名残は欠片もなくなっていく。その光景を生き残った仲間達は皆、一言も喋らず見守っていた。
 中には彼女の死に涙する者も居た。鬼兵隊の皆もまた、彼女の死に対し静かに黙祷を捧げていた。高杉は、燃え盛る炎をただ黙って見つめていた。
 彼の心には後悔の重石が重く圧し掛かっていた。何故、あの時彼女を先行させてしまったのか? 何故、あの時彼女を止めなかったのか? 今でも自分の下した采配を悔やんでいた。
 そんな高杉を桂と坂本はただ黙って見守っていた。普段は冷静に戦場を分析するあの高杉があそこまで感情を爆発させた事に少々戸惑いを覚えていたからだ。無論、その理由は二人とも知っていた。
 高杉は紅夜叉を、なのはを守りたかったのだ。共に同じ寺子屋で学び、同じ恩師の元で剣技を学び、そして、一人の女性として愛した彼女を、高杉は守りたかったのだ。
 だが、守ることが出来なかった。今更悔やんだところで彼女はもう帰っては来ない。そして、明日からはまた激しい戦いの日々が始まる。終わりのない、勝ち目のない泥沼の戦いの日々が始まるのだ。
 




 銀時は一人、仲間達
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