第75話 子供ってのは何処までも我が道を行くもの
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。紅蓮の炎に燃え盛る江戸の町。大勢の人が紅桜の刃によって切り裂かれ、無残にも命を奪われる。その中には、なのはにとって大切な存在も居た。
それだけじゃない。今こうして奪われてる命を見捨てる事も出来ない。関係はないとは言えそれがたった一つの命である事に代わりはない。それをこの男にくれてやる訳にはいかない。
となれば、今なのはがすべき事は一つだけであった。
「これで二隻沈めたか。後半分……まだまだ腹いっぱいには足りねぇよなぁ、紅桜」
「いい加減にしろぉ! この人殺しぃ!」
背後で怒号を張り上げながら岡田の首になのはの細い腕が絡みつく。背後から岡田の首を締め上げるチョークの要領だ。
幾ら子供の力とは言え首を取られれば相当息苦しくもなる。ましてや今、岡田は両手が塞がっている状態であった。そんな時にこの様な不意打ちをされてしまいすっかり先ほどまでの高揚感が冷めてきてしまった。
「この……ガキィィ!」
「何であんな酷い事を! あの船には沢山の人が居た筈なのに……何で!?」
岡田の首を絞めるなのはの手に力が籠る。なのはの感情に怒りの感情が混ざり出した証拠だった。だが、その怒りの理由が岡田にはいまいち理解出来なかった。
「何を怒ってるんだ? 俺がお前を怒らせる事を何かしたか? お前のリボンはもう捨てたって言った筈だぞ」
「そんなんじゃない! あそこに乗ってた人達を何で殺したの? お前は、人の命を何だと思ってるの!?」
「命? あぁ、命ってなぁ綺麗に光るから俺は好きだねぇ。特にその命が消える瞬間なんて、堪らなく良い。だから俺は命が大好きなのさ」
岡田の言葉には不快ささえ感じられた。この男には命の重みなんて一切感じていない。ただ命を刈り取る事を楽しんでいるだけだ。ただ欲望に従うまま、己自身の為だけに―――
「そんなの……そんなの酷すぎる! どんな人にだって命は一つしかないのに、それを奪う何て―――」
「そんな事より、いい加減離れろ! 子供の遊びに付き合うつもりは俺にはないんでなぁ!」
首に回していたなのはの手を掴み、無理やり引き剥がす。やはり子供の力で大人に対抗する事は出来ない。そのままの勢いで前方へと投げ捨てる。どうせまた戻ってくるだろうが知った事ではない。今は目の前にある桂派の攘夷志士達の乗る軍艦を沈めるだけの事だ。
「これで三隻目、おら! 好きなだけ食え、紅桜ぁぁ!」
狂気に歪んだ笑みを浮かべ、頭上へと振り上げた紅桜をそのまま一気に振り下ろす。その間、軍艦からは絶えず大砲が放たれているが如何せん的が小さい為に一向に当たらない。それに、対戦艦用に作られた紅桜に対抗する術を今彼らは持ち合わせていなかったのだ。攘夷志士達の顔に恐怖の色が映る。前に沈められた二隻の軍艦の光景が頭を過ったからだ
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